ポリフェノールが認知症予防にいいって本当?脳の健康との関係を最新研究から解説

悩む高齢女性

※ヘルスケアライティングアカデミーを卒業した、弊社所属の専門家ライターが執筆した記事です。
※健康・栄養に関するヘルスケアコラムの執筆・監修は、こちらよりご依頼いただけます。

「将来、認知症になるのが怖い」「認知症を避けられるのなら、避けたい」と感じる方は多いのではないでしょうか。認知症を遠ざけるための研究は日々進められており、近年、ポリフェノールを含む食品と脳の健康との関係にも注目が集まっています。
では、ポリフェノールは、脳の健康にどのような影響をもたらすのでしょうか。
本コラムでは、研究論文をもとに、ポリフェノールと認知症の関係について管理栄養士がわかりやすく解説します。

目次

認知症になる人、ならない人の違いとは?

認知症は、記憶力、思考力、日常生活を送る力に影響を及ぼすいくつかの病気の総称です。主に高齢者に多くみられますが、年齢を重ねたからといって、誰もが発症するわけではありません。65歳未満で症状が現れる若年性認知症は、認知症全体の約9%を占めるとされています。
認知症の発症リスクを高める要因としては、年齢(特に65歳以上)に加えて、高血圧、糖尿病、肥満、喫煙、過度な飲酒、身体活動不足、社会的孤立、うつなどが挙げられます[1]。

認知症を予防する薬や食べ物ってあるの?

コーヒー

これまでのところ、認知症を予防することを目的とした薬はなく、今後の研究が期待されています[2]。一方で、認知症の症状を和らげるために用いられる薬はいくつかあります[1]。また、認知機能の低下や認知症のリスクを減らすためには、バランスのとれた健康的な食事が重要であるとされています。ただし、食品に関しては、効果があるといえる食品は明らかになっていません[2]。

ポリフェノールで認知症は防げる?

研究イメージ

ポリフェノールは健康に役立つことが期待される成分として注目されています。認知症予防にどの程度役立つのか気になる方も多いのではないでしょうか。
ここでは、最新の研究結果をもとに、現時点で分かっていることを整理をしていきます。

注目の成分「ポリフェノール」とは?

ポリフェノールは、植物性食品に含まれる微量栄養素です[2]。主に、野菜類や大豆、紅茶、コーヒー、ワインなどに含まれています[3]。
これまでの研究では、ポリフェノールは体の中の炎症を鎮め、体をさびにくくする(酸化を抑制する)働きがあることが示されています。さらに、脳を守る働きもあり、加齢に伴う変化に対して良い影響を与える可能性があることが明らかになっています[2]。

ポリフェノールと認知症の関連を直接調べた研究では、アルツハイマー型認知症や血管性認知症を対象とした研究のほか、記憶力の低下との関連を調べた研究もあります。
ここからは、ポリフェノールが記憶力にどのような関連をについて調べた研究結果をご紹介します[1]。

記憶力の低下は認知症のサイン?

記憶力の低下は、認知症の代表的な症状です。研究では、認知症と診断される16年ほど前から、記憶力の低下がみられ場合があることが報告されています。さらに、記憶力の低下は将来の認知症発症リスクの高さと関連することが示されています。記憶力には、一時的に保存した情報を処理する「作業記憶」と、自身の体験や出来事を覚えて思い出す「エピソード記憶」があります[2]。

研究結果から見えたこと

ポリフェノールの摂取が記憶力に与える影響について、66の研究結果をまとめて検証した研究が、2022年にFrontiers in Nutritionに掲載されました。この研究では、40歳以上の人を対象に、加齢に伴う記憶力の低下に対し、植物に含まれるポリフェノールの摂取が、作業記憶(ワーキングメモリ)やエピソード記憶(エピソードメモリ)を維持・改善する効果があるかどうかを検証されています。

その結果、ポリフェノールを摂って記憶力が良くなったという研究もあれば、全く変化がなかったという研究もあり、結果にばらつきがありました[3] 。

この研究結果から、ポリフェノールには認知症リスクと関わる記憶力の維持をサポートする可能性が示されたものの、その効果は大きくないと考えられています。そのため、ポリフェノールによる認知症予防への効果をより確かにするためには、今後さらに大規模で長期間の研究が必要とされています[2]。

認知症を遠ざけるには、どうしたらいいの?

ランニングをする高齢女性

以下の生活習慣に気を付けることで、認知機能の低下や認知症リスクを低減できることが、世界保健機関(WHO)で示されています[1]。

  • 運動を習慣化する
  • 禁煙をする
  • お酒は適量にする
  • 適正体重を維持する
  • 血圧、コレステロール、血糖値を正常に保つ
  • 地域や社会との関わりを持つ

ポリフェノールだけに頼らないことが大切

現時点では、ポリフェノールによる認知症予防効果について、十分な科学的根拠があるとはいえません。そのため、認知機能の低下を防ぐにはポリフェノールだけに頼るのではなく、健康的な食習慣や運動習慣、社会参加をあわせて取り入れることが望ましいと考えられています[1]。
健康づくりは、毎日の積み重ねから始まります。この機会に、ご自身の生活習慣を見直し、無理のない範囲でできることから取り組んでみてはいかがでしょうか。

【参考文献】(すべて2026年6月6日閲覧)
[1] World Health Organization:Dementia
[2] World Health Organization:Global action plan on the public health response to dementia 2017 – 2025
[3] De Vries K, et al. The Effect of Polyphenols on Working and Episodic Memory in Non-pathological and Pathological Aging: A Systematic Review and Meta-Analysis Front Nutr. 2022 Jan 26;8:720756.
[4] 農研機構:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 機能性成分含有量
[5] World Health Organization:認知機能低下および認知症のリスク軽減, WHOガイドライン

著者プロフィール

管理栄養士 橋本牧子

結婚・出産を機に食事の大切さを改めて感じ、大学で学び直し管理栄養士の資格を取得。乳幼児やシニア世代の栄養相談や健康教室の講師など幅広く活動する中で、科学的根拠の乏しい健康情報が世の中に多いことに問題意識を持ち、確かな情報を広く発信すべくヘルスケアライターとして活動をはじめる。現在は、ミドル世代女性の健康を中心に、生活習慣病や更年期といった、からだの変化に寄り添いながら、健やかな毎日をサポートする情報発信を行う。
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