非アルコール性脂肪性疾患(MASLD)の予防にいい食べ物ってあるの?管理栄養士が解説

「え?わたしが?お酒を飲んでいないのに、健康診断で脂肪肝と言われた。」そんな経験はありませんか。
今、お酒をあまり飲まないにもかかわらず脂肪肝になる方が増えていると言われています。今回は、そんな非アルコール性脂肪性疾患(MASLD)の予防に関連しているといわれている食べ物について紹介します。

そもそもMASLDってなに?

肝臓に脂肪が多くたまった状態が脂肪肝です。放置すると肝炎や肝硬変などを引き起こすと言われています[1]。脂肪肝は原因によって分類されており、主なもののひとつはお酒の飲み過ぎによる脂肪肝で、アルコール性脂肪肝(ALD:alcohol-associated (alcohol-related) liver disease)と呼ばれています。
もうひとつは、お酒をあまり飲んでいないのに食生活や運動といった生活習慣の乱れや内臓肥満、ストレスなどが原因で脂肪肝となる、非アルコール性の脂肪肝(MASLD:metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)です[1]。

MASLDは、NAFLDから名称が変更したもの

このMASLDという名称、実はNAFLDから変更になっています。以前から欧米ではNAFLDという用語が患者への偏見になるという声が上がっていたようで、“alcoholic”および“fatty”から“metabolic”(代謝性)という用語を含めることに変更されることが、欧州肝臓学会国際肝臓学会議(EASL-ILC)2023で発表されました[2]。今、肥満の人やメタボリックシンドロームの患者の増加に伴ってMASLD患者数は増えているのが現状です。

MASLDの予防にいい食べ物ってあるの?

MASLDのリスクとの関連を検討した研究結果が報告されている食べ物は複数ありますが、その中で2つ紹介したいと思います。

1.コーヒー

コーヒーを飲む習慣がある人とない人のMASLDリスクを比較したレビュー論文の報告によると、コーヒーを飲む習慣がある人は、飲まない人よりもリスクが低かったそうです[3]。

2.ナッツ

近年、日本人にも身近な食材として親しまれているナッツ。ナッツの摂取がMASLDに与える影響を調査した研究結果によると、ナッツを多く摂取する習慣がある人は、MASLDのリスクが低いことが報告されました。よって、ナッツはMASLDの予防において、重要な食事要素である可能性があることが示されています。ナッツは一般的に油分が多く、カロリーが高いため、エネルギーの摂り過ぎに注意して、上手に取り入れたいですね[4]。

脂肪肝になる前に、できることから始めよう

MASLDは生活習慣が関わって発症する疾患です。予防のために、食事や運動、睡眠など生活習慣を振り返ってみませんか。今回ご紹介したリスクを低下する可能性がある食品は、そればかりを偏って摂ることがないよう、食事全体のバランスに意識を向けて健康的な食習慣を心がけましょう。

【参考文献】(すべて2024年8月24日閲覧)
[1] 厚生労働省, e-ヘルスネット, 脂肪肝
[2] Rinella ME, et al. A multi-society Delphi consensus statement on new fatty liver disease nomenclature. J Hepatol 2023 June 20
[3]Wijarnpreecha K. et al. Coffee consumption and risk of nonalcoholic fatty liver disease: a systematic review and meta-analysis. Eur J Gastroenterol Hepatol. 2017 Feb;29(2):e8-e12.
[4] Pan L, et al. Effect of Nut Consumption on Nonalcoholic Fatty Liver Disease: A Systematic Review and Meta-Analysis. Nutrients. 2023 May19;15(10):2394.

著者プロフィール

中川麻奈美 管理栄養士

管理栄養士 中川麻奈美
病院、福祉施設に勤務した後、学校給食業務に携わる。より人々の健康作りに貢献したいとの思いから、特定保健指導やヘルスケアコラムの執筆活動にも注力している。主に生活習慣病の予防を中心に、健康的な食生活を支えられる科学的根拠のある情報を発信することを大切にしている。
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