
「妊娠期に鉄が大事」というのは知っているけど、どうやって摂ればいいの?と悩んでいませんか?
鉄は、妊娠中のママだけでなく、赤ちゃんの成長にも欠かせない栄養素です。
本記事では、妊娠中の鉄の重要性やおすすめの食材、効率よく摂るための食事のコツをお伝えします。
Contents
なぜ妊娠期に「鉄」が必要なの?

鉄には、赤血球内にあるヘモグロビンを作る機能鉄と、鉄の貯蔵や運搬をする貯蔵鉄の2つの役割があります[1] 。
妊娠期には、母体の基本的な鉄の利用に加え、赤ちゃんの成長に伴ってさらに多くの鉄が必要になります。加えて、ママと赤ちゃんをつなぐ臍の緒や胎盤に蓄えられる貯蔵鉄の確保も必要です。その上、妊娠中は血液量が増加し、それに伴って赤血球の量も増えるため、鉄の必要量が大幅に増えます 。
妊娠の経過が初期・中期・後期に進むにつれて鉄の必要量は段階的に増加します。
赤ちゃんはおよそ生後4ヶ月頃までは、体内に貯蔵された鉄を利用します。そのため、妊娠中にママが十分な鉄を摂取することが、赤ちゃんの健康にも影響するのです[1] 。
知っておきたい!鉄に関する新常識
鉄には、ヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があるのをご存知ですか?
ヘム鉄は肉や魚などの動物性食品に多く含まれ、非ヘム鉄は野菜や豆類など植物性食品に含まれています。
以前は、非ヘム鉄はヘム鉄に比べて吸収率が低いため、動物性の食品を優先して摂取すべきと考えられていました 。ところが最新の研究報告によると、鉄の栄養状態が低い場合や、鉄の必要性が高い場合、非ヘム鉄の吸収率はヘム鉄の吸収率を上回る可能性があることがわかったのです 。
この結果をふまえ、ヘム鉄の多い動物性食品だけでなく、非ヘム鉄である植物性の食品も積極的に取り入れることが大切です[1] 。
妊娠中の鉄補給におすすめの食材

妊娠期は、鉄が不足しないように意識したいですよね。ほとんどの人が不足しない量(推奨量)として、妊娠初期は8.5mg/日、妊娠中期・後期は14.5mg/日を目指しましょう[1]。
それではどのような食品を摂ると良いのでしょうか?
ここでは、妊娠中におすすめの食材や普段の食事に取り入れる方法をご紹介します[2]。
肉・魚
代表的な食材:牛・豚・鶏などの赤身肉
鉄といえば、レバーを想像する方も多いでしょう。レバーは鉄を多く含む代表的な食品ではありますが、毎日食べることは難しいと感じるかもしれません。毎日の食生活の中で取り入れることを意識をするのであれば、お肉を食べる際に赤身肉を選ぶようにするのがおすすめです。
代表的な食材:カツオ、アジ、サバ、シジミ
魚の下処理が面倒な場合は缶詰が便利です。缶詰は日持ちがしやすく長期保存も可能、そのまま食べることができるのでおすすめです。
野菜類
代表的な食材:小松菜、菜の花、ほうれん草、ブロッコリー
生の野菜を調理することも良いですが、忙しい時や疲れた時には冷凍野菜を使うと、手軽に栄養を摂ることができます。
大豆製品
代表的な食材:納豆、豆腐、がんもどき、厚揚げ
納豆や豆腐は調理をしなくてもそのまま食べることができるので、もう1品追加したい時に便利です。
また、煮物に使うことの多いがんもどきや厚揚げは、焼くだけで簡単に食べられるので、忙しい日の食事にもおすすめです。
穀類
代表的な食材:玄米、半つき米
主食の白米を、玄米や半つき米に置き換えるだけで、手軽に鉄の摂取量を増やすことができます。100gあたりの鉄の含有量は少なくても、穀類は食べる量が多いので日本人において大切な鉄の摂取源の1つでもあります。
さまざまな食品を食べて妊娠期を元気に過ごそう!
鉄不足にならないために、これさえ食べたら大丈夫!という食材はありません。サプリメントによる鉄補給も、健康への悪影響を引き起こす可能性があるため、むやみにとるのは控えた方が良いでしょう。効率よく鉄を摂るために大切なのは、毎日の食事にさまざまな食品を組み合わせることです。ママと赤ちゃんの健康のために、楽しみながら食事を大切にしてくださいね。
【参考文献】(すべて2025年2月27日閲覧)
[1] 厚生労働省, 日本人の食事摂取基準(2025年版)
[2] 文部科学省, 日本食品標準成分表 (八訂) 増補2023年版
著者プロフィール

管理栄養士 橋本牧子
結婚・出産を機に食事の大切さを改めて感じ、大学で学び直し管理栄養士の資格を取得。乳幼児やシニア世代の栄養相談や健康教室の講師など幅広く活動する中で、科学的根拠の乏しい健康情報が世の中に多いことに問題意識を持ち、確かな情報を広く発信すべくヘルスケアライターとして活動をはじめる。生活習慣病や女性の健康を得意とし、現在までに数多くのコラムを執筆している。料理撮影やレシピ開発の実績も豊富。詳しいプロフィールはこちら