春から夏にかけて、紫外線が強まる時期です。紫外線は、肌の日焼けだけでなく、シミ・シワ・老化の原因になり、目にも悪影響を及ぼします。
本記事では、紫外線の健康への影響や、内外からの効果的な紫外線対策について詳しく解説します。
Contents
紫外線がもたらす健康への悪影響

紫外線は目に見えないため、気づかないうちに長時間浴びてしまいがちです。その結果、身体に様々な悪影響があることがわかっています[1]。ここでは、代表的なものとして皮膚や目にどのような影響があるかを解説します。
1.皮膚への影響
紫外線を浴び続けると、皮膚の弾力が低下し活性酸素が発生してDNAを傷つける可能性があります[2]。私たちの身体がこのダメージから皮膚を守るために生成するのが黒褐色のメラニン色素です[1]。メラニン色素は、紫外線を吸収し、皮膚を守る役割を果たします[1]。活性酸素が原因で、皮膚の老化が加速し、シミやシワ、皮膚がんなどのリスクも高まることが示されているので注意が必要です[2]。
2.目への影響
紫外線は肌だけでなく、目にもダメージを与えます[1]。紫外線による目の障害には、角膜や結膜に炎症が起こる紫外線角膜炎、水晶体の異常により視力が低下する白内障、屋外での活動時間が長い(紫外線を多く浴びる)人がかかりやすい翼状片などがあると示されています[1]。夏だけでなく、冬のスキー場でも太陽光の反射で紫外線を多く浴びるため、目を守ることが重要です[1]。
実は、紫外線は健康にいい影響もある!
紫外線には、私たちの健康に対して有益な面もあります。それは、適度に浴びることで皮膚でビタミンDが合成されることです[1]。ビタミンDはカルシウムの吸収を促進し、 筋肉や免疫の維持にも関与する重要な栄養素で、不足すると骨折リスクが増加すると報告されています[3]。
ビタミンDの目安量は12歳以上の男女で9.0μgです[3]。この量は、紫外線が多い7月の昼頃に約6分間日光を浴びることで、皮膚で合成することができます[4]。しかし、日焼け対策を徹底している人は皮膚での合成が難しく不足しやすいため、食事からの摂取を意識することが大切です。
ビタミンDを多く含む食品には、魚やきのこ類があります[2]。ビタミンDが不足しないように、適度な日光浴に加え食事からの摂取を心がけましょう。
紫外線の浴び過ぎを予防する3つの対策

紫外線は適度に浴びることで健康に良い影響もありますが、過度に浴びると悪影響を及ぼすため適切な対策が必要です。環境省が示す「紫外線環境保健マニュアル2020」に基づき、紫外線の浴び過ぎを防ぐ3つの対策を紹介します。
1. 紫外線の強い時間帯を避ける
紫外線が強い季節は4月~9月、時間帯は午前10時~午後2時と示されています[1]。紫外線の影響が少なくなるように、季節や時刻を考えて屋外での活動を行うようにしましょう。
2.日差しを避ける
日差しが強い日は、日陰を歩き、帽子や日傘を使うことで、紫外線の影響を軽減できます。また、長袖のシャツを着ることや、紫外線をカットするサングラスやメガネをかけることも効果的です[1]。
3.日焼け止めをする
肌が露出しているところには日焼け止めを塗ることが効果的です。洗濯物を干すなど外の家事をするときにはそれほど強くない日焼け止めで十分です。紫外線の強い時期に長時間外にでるときは、効果の高いものを使用し、プールや海など水に入る場合には、耐水性の高いものを使いましょう。塗った日焼け止めは、衣類に触れたり、汗を拭いたりすることで落ちてしまうため、重ね塗りをしたり、または2〜3時間おきに塗り直すことが推奨されています[1]。
紫外線を身体の内側から守る3つの栄養素

紫外線によるダメージを防ぐには、外側だけでなく、内側からの対策も欠かせません。
ここでは、紫外線を浴びることで発生が促進されてしまう”活性酸素”の働きを抑える3つの抗酸化ビタミンについて紹介します[6]。
1. ビタミンA(レチノール活性当量)
ビタミンAは、網膜細胞を保護したり、目の働きを正常に保つ働きがあります[3]。ビタミンAの1日に必要な推奨量は、男性(18~29歳)では850μgRAE、(30~64歳)900μgRAE、女性(18~29歳)では650μgRAE、(30~64歳)では700μgRAEとされています[3]。卵1個で110μg、かぼちゃ1/20個で150μg、にんじん1本で950μg、ほうれん草1束で700μgのビタミンAを摂取できます[5]。ビタミンAは食事からの摂取に問題はありませんが、サプリメントなどで過剰に摂取すると過剰症を起こすことがあるため、注意が必要です[3]。
2.ビタミンC
ビタミンCには抗酸化作用のほか、コラーゲンの合成を助ける働きがあります[3]。1日に必要なビタミンCの推奨量は、18歳以上の男女で100mgとされています[3]。主に野菜、果物、いも類などに含まれています。ビタミンCを100mg摂るには、ブロッコリー4房とキウイフルーツ1個を摂れば達成できます[5]。水溶性であるためサプリメントなどで大量に摂取しても余った分は尿から排泄されてしまいます[3]。
3.ビタミンE
ビタミンEに必要な1日の目安量は、男性(18~64歳)では6.5mg、女性(18~29歳)では5.0mg、(30~64歳)では6.0mgです[3]。主に植物性油脂、大豆、アーモンドなどの種実類に含まれています[5]。サフラワー油大さじ1杯で3.2mgとアーモンド5粒で1.5mg、かぼちゃ小鉢1杯2.7mgの3種類を摂ると、ビタミンEの1日の目安量を達成できます[5]。
紫外線予防は体の内外からのケアが大切
紫外線は、過度に浴びてしまうと肌や目などに悪影響を与える一方で、適度に浴びることはビタミンDの生成にも役立ちます。重要なのは、悪影響を最小限に抑えるために必要な対策を取ることです。3つの対策と内側からのケアを意識して、紫外線から肌と健康を守る習慣を身につけましょう。
【参考文献】(すべて2025年2月25日閲覧)
[1] 環境省, 紫外線環境保健マニュアル2020
[2] 環境省, 参考資料1. 紫外線による人の健康への影響
[3] 厚生労働省, 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」 策定検討会報告書
[4] 国立研究開発法人, 国立環境研究所
[5] 文部科学省, 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
[4] 国立研究開発法人, 国立環境研究所
[6] 厚生労働省, e-ヘルスネット, 抗酸化ビタミン
著者プロフィール

管理栄養士・学術修士(医療・福祉マネジメント)
なかがわ けいこ
乳幼児から高齢者まで各ライフステージの栄養指導を経験。現在も科学的根拠に基づいたアドバイスをモットーに、現実的で続けやすく、豊かな食生活が送れるようなプランを考え食事のサポートしている。また、生活習慣病や高齢者の健康の情報発信としてコラムの執筆活動も行っている。
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