血糖値に要注意!夏に潜む糖尿病のリスク

夏の糖尿病コラム

夏の時期になると、暑さに影響され、普段とは少し違う食生活や生活習慣を送ってはいませんか?
実はその習慣が糖尿病を招く原因になっているかもしれません。
この記事では、夏に潜む糖尿病のリスクについて管理栄養士が解説します。

健康でも油断大敵!夏に糖尿病が増えるって本当?

今年も健康診断で異常がなかったと安心していませんか?しかし、油断は大敵です。健康な人でも、夏に“とある行動”をすると、急性の糖尿病を引き起こしてしまう可能性が高まります。

その行動とは、水分補給として、炭酸飲料や清涼飲料などの糖質が大量に含まれている飲み物を多飲することです。炭酸飲料や清涼飲料などを飲むと、健康な人でも血糖値は上昇します。血糖値が上昇すると喉が渇き、そこでさらに清涼飲料を飲むという悪循環を繰り返すと、血糖値が高い状態が続きます。次第に倦怠感や体重減少などの糖尿病の症状が出現し、重篤な場合は、意識障害などを起こすことも。この状態を、“ソフトリンクケトーシス”と言います[1,2]。“ペットボトル症候群”とも呼ばれ、こちらを耳にしたことがあるかたは多いのではないでしょうか。
普段から清涼飲料水や炭酸飲料などのジュースを飲む習慣がある人は要注意。水やお茶などの糖質が含まれない飲料での水分補給を心掛けましょう。

夏こそ意識したい!糖尿病を防ぐ行動3つ

糖尿病は、血糖値を下げるインスリンというホルモンの不足や体への作用の低下によって血糖値が慢性的に高くなってしまう病気です[3]。夏はソフトドリンクケトーシスのような急性な糖尿病だけでなく、生活習慣が原因となる2型糖尿病を招く行動がたくさん隠れています。夏の時期にこそ意識したい行動を3つ解説します。

(1)アイス、ジュースの摂り過ぎに要注意

夏の糖尿病コラム

暑い夏には、冷たいアイスやジュースをついつい食べたくなりますよね。しかし、ジュースやアイスには、糖質の中でも比較的吸収が早い、ブドウ糖や果糖、ショ糖などがたくさん含まれており、大量摂取をすると肥満や糖尿病を招いてしまいます[2,4]。
また、野菜や果物の代わりに、野菜ジュースやフルーツジュースを取り入れている人も要注意。果物そのものは、食べ過ぎなければ糖尿病の発症リスクを下げる可能性がありますが、ジュース類にはショ糖が加えられていて、かえってリスクに[2]。ジュースやアイスを取り入れたい時は、他の間食と合わせて1日200kcalまでの摂取にしましょう[5,6]。

(2)こまめに動いて、運動不足を解消

夏の糖尿病コラム

暑い日が続くとついつい室内でダラダラしてはいませんか?活動量が減り、気が付いたら体重が増加していたなんてことも。体の脂肪細胞が増えると、インスリンの作用が低下し、血糖値を下げにくくするため、肥満の人は糖尿病になりやすいと言われています。また、座っている時間が長いと、肥満だけでなく、心疾患などのリスクも高まることに[2]。

エレベータやエスカレータではなく、あえて階段を使ったり、室内で筋トレを行うなど、ちょっとした工夫をして活動量を増やしましょう。

(3)お酒の飲み過ぎはほどほどに

夏の糖尿病コラム

飲み会が増えたり、お風呂上がりのビールが美味しい時期ですよね。アルコールの過剰摂取は、肥満を招くだけではなく、アルコールそのものが糖尿病の発症リスクになる可能性があります。病気を防ぐためにもアルコール量は1日20〜25g/日とし、週に2,3日の休肝日を取り入れましょう[2,3]。また、おつまみは揚げ物や味が濃いものを避け、枝豆やサラダなどのエネルギー(カロリー)が低いものを選ぶことを意識しましょう。

【アルコール1日の目安量(ml)】

種類目安量目安量(ml)
ビール(5%)ロング缶1本500
チューハイ(7%)レギュラー缶1本350
ワイン(12%)ワイングラス2杯200
梅酒(13%)1合180
日本酒(15%)1合180
焼酎(25%)グラス1/2杯100
ウイスキー(40%)グラス1/2杯100
※厚生労働省, e-ヘルスネット, 飲酒量の単位より[7]

生活と体調の変化に意識を向けて

糖尿病は20歳以上の男女の6人に1人が発症する可能性があると言われるほど身近な病気です[8]。日々のちょっとした習慣の積み重ねが、病気を招いてしまいます。生活の変化に意識を向けて、病気を予防しましょう。また、熱中症や夏バテかなと思っていたら、実は糖尿病だったなんてこともあるので、異変を感じたら医療機関を受診することも大切です。

【参考文献】(すべて2024年6月11日閲覧)
[1] 厚生労働省, e-ヘルスネット, 嗜好飲料(アルコール飲料を除く)
[2] 日本糖尿病学会, 糖尿病診療ガイドライン2024
[3] 厚生労働省, 日本人の食事摂取基準(2020年版)
[4] 文部科学省, 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
[5] 厚生労働省, e-ヘルスネット, 嗜好飲料(アルコール飲料を除く)
[6] 厚生労働省, e-ヘルスネット, 間食のエネルギー(カロリー)
[7] 厚生労働省, e-ヘルスネット, 飲酒量の単位
[8] 厚生労働省, 令和元年国民健康・栄養調査, 第2部身体調査の結果, 第53表 「糖尿病が強く疑われる者」及び「糖尿病の可能性を否定できない者」の状況-糖尿病が疑われる者の状況,年齢階級別,人数, 割合-総数・男性・女性,20 歳以上, p161

著者プロフィール

金澤りな|ムーンリズム栄養アドバイザー|管理栄養士|プロフィール写真

管理栄養士 金澤りな
大学卒業後、保育園施設で栄養士業務の経験を経て、管理栄養士の資格を取得。現在は栄養士養成課程の助手をしながら、糖尿病専門クリニックに勤務。科学的根拠を基に正しい情報を届けたいという想いのもと、コラム執筆や食育講師、健康講演等などフリーランス管理栄養士としても活動中。
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