暑さが厳しくなり、太陽からの紫外線もじりじりと肌に感じる季節になってきました。紫外線は日焼けやしみなど、肌へのダメージが気になるところですね。
しかしその一方で、紫外線が皮膚に当たると、妊活に大切な栄養素であるビタミンDが産生されることをご存じですか?[1]。過度の紫外線対策は、ビタミンDが不足してしまう原因になっているかもしれません。
今回は、妊活で注目の栄養素ビタミンDについて、不足しないための対策も含め、詳しくお伝えしていきます。
Contents
骨粗しょう症予防、がん予防、妊活、多岐にわたるビタミンDの働き
ビタミンDはカルシウムの吸収を促進して、骨の形成を助ける栄養素として知られています。近年では、心血管疾患やがんなどの疾病予防に対しても寄与している可能性があると報告されています[2,3]。妊活の分野においても、ビタミンDを十分に摂れている女性の方が体外受精での出生率が高いという研究結果が出ており、妊活の成功率を高めるための栄養素として注目されています[1]。
ビタミンDは不足しやすい栄養素
妊活や健康維持のために不足しないように摂っておきたいビタミンDですが、実は、日本人の多くが不足傾向にあります。特に高齢者よりも生殖可能な年代(20~49歳代)の不足が深刻です。厚生労働省では、ビタミンDの不足のリスクの少ないとされる摂取目安量を8.5㎍としています。しかし、30~39歳女性の場合だと、平均摂取量が4.9㎍となっており、摂取目安量の6割程度しか摂れていません[2,4]。
ズバリ!ビタミンDが不足しがちな食習慣とは?
ビタミンDは魚に多く含まれ、日本人は魚から約8割のビタミンDを摂っています[2]。そのため、普段、魚をあまり食べる機会がないという方は不足している可能性が高いと言えるでしょう。魚以外にはきのこ、卵にも比較的多く含まれていますが、穀物、芋、野菜、豆類にはほとんど含まれておらず、肉類も少量です[5]。
魚を意識して摂るようにしてみよう
ビタミンDの不足を避けるためには、1日に1食、魚を食べる習慣をつけるようにすると良いでしょう。魚は調理が面倒なイメージがあるかもしれませんが、意外と少しの工夫で食べる量を増やせる手軽な方法もあります。例えば、おにぎりの具に鮭を選ぶようにしたり、ごはんにしらすをのせたり、いわしやさばなどの缶詰やお刺身を少し購入することなどから始めてみてはいかがでしょう。
【ビタミンDが多く含まれている食品(100gあたり)】
種類 | 目安量 |
ぶり | 8.0㎍ |
めかじき | 8.8㎍ |
さば | 10㎍ |
しらす | 12㎍ |
ぎんざけ | 15㎍ |
さんま | 15㎍ |
いわし | 32㎍ |
食べる以外にある、ビタミンDを補う方法
冒頭にもお伝えしましたが、ビタミンDは日光(紫外線)を浴びると皮膚から産生される珍しい特徴を持つ栄養素です。食事からだけでなく、紫外線を浴びるようにすることで、血液中のビタミンD濃度が満たされやすくなります。
普段、室内にいることが多い方は太陽が出ている時間帝に外出する機会を増やすように心がけましょう。外出の際に紫外線対策をしている方はより多く食事からビタミンDを摂る必要がありそうです[2]。
肌へのダメージを受けず、ビタミンDを合成するには?
紫外線が健康維持や妊活のためによいとわかっても、肌へのダメージを考えると、紫外線は極力浴びたくないと思われた方も多いかもしれませんね。ですが、実際には皮膚が赤くなってくる量の紫外線を頻繁に浴びなければ、肌が黒くなったり、シミになる原因にはならないようです。緯度や季節により大きく異なりますが、7月の茨城県つくば市、正午の時間帯であれば、顔と手に紫外線を3.5分浴びることで5.5㎍のビタミンDを産生することができます。顔は極力紫外線を浴びたくないという方は、顔以外の皮膚から紫外線を浴びるようにしたり、顔だけは日焼け止めクリームを使用して日光浴をするのも良いでしょう[2]。
【5.5㎍のビタミンDを産生するために必要な太陽光を浴びる時間(分)】
※7月に顔と手に浴びた場合、
測定地点(緯度) | 時刻 | ||
9時 | 12時 | 15時 | |
札幌(北緯43度) | 7.4 | 4.6 | 13.3 |
つくば(北緯36度) | 5.9 | 3.5 | 10.1 |
那覇(北緯26度) | 8.8 | 2.9 | 5.3 |
魚と太陽の力でビタミンDの不足を防ごう
ビタミンDは十分な魚の摂取と、適度な日光浴をすることで不足を防ぐことが出来ます。紫外線に浴びる機会が少ない、雨や曇りが続き紫外線量が少ない日などの場合には、皮膚からのビタミンDが産生される量が少なくなります。このような時には、魚を積極的に食べるようにするようにしてみてください。不足していないか心配な方は、血液中のビタミンD濃度を測定することが出来るので主治医に相談してみるのも1つの選択肢です。自分に合う取り入れ方でビタミンDを不足しないように摂り、妊娠しやすい身体づくりをしていきましょう。
【参考文献】(すべて2024年4月20日閲覧)
[1] J Chu. et al. Vitamin D and assisted reproductive treatment outcome: a systematic review and meta-analysis.Hum Reprod. 2018;33(1):65-80.
[2] 厚生労働省, 日本人の食事摂取基準(2020年版)
[3]Budhathoki S, et.al. Plasma 25-hydroxyvitamin D concentration and subsequent risk of total and site specific cancers in Japanese population: large case-cohort study within Japan Public Health Center-based Prospective Study cohort. BMJ. 2018 Mar 7;360:k671.
[4] 厚生労働省, 国民健康・栄養調査(令和元年)
[5] 文部科学省, 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
著者プロフィール
管理栄養士/妊活食事アドバイザー 榊 玲里
自身の不妊症の経験をいかし、妊活食事アドバイザーとして不妊で悩む方に向けてオンラインでの栄養カウンセリングや不妊専門クリニックにおいて妊孕力を高めるための食事法のセミナーを行っている。著書に「身近な素材ですぐできる手作り健康常備食」(PHP研究所)他。
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WEBサイト: はぐくむ妊活ごはんラボ