【管理栄養士監修】高血圧を防ぐためにー今日からできる運動習慣のすすめ

※ヘルスケアライティングアカデミーを卒業した、弊社所属の専門家ライターが執筆した記事です。
生活習慣病が注目されがちな現代において、日本の人口全体の約4人に1人が高血圧と推定されています。高血圧は自覚症状が少ないため「サイレントキラー」と呼ばれ、放置すると重大な病気につながる恐れがあります[1]。発症を予防するためには、生活習慣の改善が欠かせません。特に、食事からのアプローチと毎日の運動習慣が予防のカギとなります。
この記事では、管理栄養士が高血圧の発症予防につながる「運動習慣」を科学的根拠に基づいて解説します。
高血圧は放っておくと危ない!知らないうちに進む体のダメージ
高血圧とは、収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上が続いている状態です。ただし、診察室では緊張などで高めに出ることがあるため、家庭で測定する「家庭血圧」が優先されます。
家庭血圧では、5日間以上測定した平均値が、収縮期血圧135mmHg以上、または拡張期血圧85mmHg以上の場合に高血圧と診断されます。血圧が高くなる要因として、肥満や塩分(食塩)の摂り過ぎ、運動不足などが関係しています[1]。
高血圧になると、糖尿病や腎臓病などの合併症を引き起こすほか、心臓に負担がかかることにより、脳卒中や心筋梗塞などの脳心血管病につながります。最悪の場合、命に関わることもあるため、早めの対策が重要です[1]。
運動で血圧が安定する理由

高血圧を防ぐには、生活習慣の改善が欠かせません。その中でも特に重要なのが「運動」です。
運動によって血管がしなやかになり、血流がスムーズになるだけでなく、自律神経のバランスも整い、血圧が上がりにくくなります[2]。『高血圧管理・治療ガイドライン2025』でも、生活習慣の改善の一つとして、高血圧予防のために運動習慣を取り入れることが推奨されています。
また、体重増加も高血圧のリスク要因です。摂取エネルギーが消費エネルギーを上回れば体重は増加し、その逆となれば体重は減少するという仕組みから、運動によって消費エネルギーを増やすことも大切です[1]。
高血圧予防のために!今日からできる運動習慣

どんな運動がおすすめ?
1. 有酸素運動(ジョギング・水泳など)
WHOの『WHO身体活動・座位行動ガイドライン』では、少なくとも以下のような運動が推奨されています[3]。
- 中等度の有酸素性運動(速歩・軽いサイクリングなど):週150分~300分
- 高強度の有酸素運動(ジョギング・水泳など):週75分~150分
- 両方を組み合わせた同等の身体活動
2.筋力トレーニング
可能であれば、筋力向上のために以下のようなトレーニングも推奨されています[3]。
・中強度以上の筋トレ(腕立て伏せ、スクワット・マシンを使った運動など):週2日以上
※高齢者においては、さらに機能的な能力向上や転倒予防のために、機能的なバランスと筋力トレーニングを重視した多様な要素を含む身体活動(水中ウォーキングや片足立ち、バランスボールを使った運動など)を中強度以上で週3日以上行えるとなお良いとされています[3]。
あなたに合わせた実践しやすい運動メニュー例!
では、実際にどのような運動をすれば、高血圧予防に必要な運動量を満たせるのでしょうか。
ここでは、ライフスタイルに合わせて無理なく続けられる運動メニュー例をご紹介します。
【成人(18〜64歳)の場合】
毎日60分以上のウォーキング
【高齢者(65歳以上)の場合】
40分以上のウォーキング
【仕事でデスクワーク多めの方の場合】
通勤で一駅分早歩き(約20分)→昼の休憩時間にオフィス周辺を散歩(約15分)→帰宅時に買い物を徒歩で(約15分)→帰宅後に家事(約15分)
【主婦の場合】
朝の家事(掃除機や洗濯物干しなど)(約20分)→自転車で買い物(約20分)→夕食後の後片づけ(約15分)→YouTube動画でストレッチなど(約15分)
日常生活でできるちょっとした工夫

上記のような運動が難しい場合は、以下のような日常生活に取り入れられる工夫で体を動かしましょう[2]。
・通勤や買い物の際に一駅分歩く
・エレベーターより階段を選ぶ
・デスクワークの合間にストレッチをする
・休日にジムやゴルフなどのスポーツをする
・ペットと散歩する
・家庭菜園で野菜を植えてみる
長時間座り続けることは血圧をあげる要因になるため、少しでもいいので合間に立ち上がって、体を伸ばす習慣をつけましょう[3]。
無理なく続けることも大切
今回は運動の取り入れ方について解説をしましたが、高血圧予防には運動だけではなく、食事の見直しや適正体重の維持など、総合的な生活習慣の改善が必要です[1]。
また、急に運動を始めると怪我につながることもあるため注意が必要です。すでに血圧が高めの方は、医師に相談してから始めるのが良いでしょう。
まずは自分の生活に合わせて、無理なくできることから始めてみてください。
著者プロフィール

管理栄養士
志田 有里紗
大学卒業後、2年程委託給食会社の栄養士として働いたのち、介護医療院併設の病院で介護医療院担当の管理栄養士として現在活躍中。外来の栄養指導も行っており、特に高血圧・糖尿病・脂質異常症の個人指導を行うことが多い。病棟の管理栄養士も経験する予定。今後、病院での業務を行いながらライターとして生活習慣病予防関連のコラム執筆活動を行う。
