
管理栄養士の収入事情について調べていると「管理栄養士は稼げない」という情報をよく目にすると思います。 しかし、本当に管理栄養士で稼ぐのは難しいのでしょうか?
この記事では、管理栄養士は本当に稼げないのか、年収を上げるためにはどうしたら良いのかなどについて紹介していきます。
Contents
管理栄養士の稼ぎはどのくらい?年収の実態
令和5年度賃金構造基本統計調査によると栄養士の平均年収は約376万円[1]。給与所得者全体の平均年収である460万円と比較すると、84万円ほど年収が低い結果となっています[2]。このことから「管理栄養士は稼げない」というイメージがついているのではないかと考えられます。
ちなみに、厚生労働省の調査では栄養士、管理栄養士ともに「栄養士」として換算されており、管理栄養士のみを対象とすればもう少し年収が上がる可能性もあります。しかし、依然として日本人の平均年収以下であると考えられます。
管理栄養士の資格で稼ぐのが難しい理由

管理栄養士・栄養士の給料は全体の平均年収を下回っていますが、なぜ稼ぐのが難しい傾向があるのでしょうか?様々な要因が考えられますが、代表的な5つの理由を紹介します。
1、利益を生み出すのが難しいため
管理栄養士の典型的な業務として挙げられるのは、給食管理や献立作成など。これらは直接的な利益を生み出すのが難しいため、その対価としての給料が低くなりがちです。
病院や介護施設では、管理栄養士が携わることで医療保険や介護保険から診療報酬や加算を取ることができます。しかし、取れる点数(=管理栄養士が生み出せる利益)よりも管理栄養士を雇用するコストの方が高い傾向があります。
2、業務独占資格ではないため
管理栄養士は業務独占資格ではなく、名称独占資格。つまり、管理栄養士の有資格者でなければ携わることを禁じられている業務はありません。例えば、管理栄養士の業務の中で花形とも言える栄養指導も、医師や看護師等の専門職が代わりに行なっても問題はありません。
それどころか、無資格の方が栄養指導を行なっているケースも多々あります。 このように、現状では管理栄養士を雇う必要性が低いことが、低賃金に繋がっており、稼ぎにくい原因の一つであると考えられます。
3、1人配置の職場が多く、教育環境が整っていないため
給料を上げるためには、スキルアップをして自分の価値を高める必要があります。職場での人材育成は、OJT(On-the-Job Training)が効果的だと考えられています。OJTとは現場での実践的な教育訓練を指し、上司や先輩などの社内の人材がトレーナーとなり、実際の業務を通して必要なスキルや知識を指導します。しかし、管理栄養士は職場に1人しか配置されていないことも多く、OJT教育の環境が整っているとは言い難いようです。そのため、収入アップを狙うには自ら積極的に自分の価値を高める努力をする必要性が高いと言えるでしょう。
4、女性が多い資格のため
日本社会では一般的に勤続年数が長くなるほど給与が上がる傾向があります[2]。管理栄養士の平均年収の分布を見ても、他職種と同様に勤続年数がより長い40代以上は、20〜30代と比べて年収が高いようです[3]。しかしながら、女性は結婚や出産をきっかけに非正規雇用へ転換する割合の増加や短時間勤務制度を希望する割合の増加が見られます。[4]。管理栄養士の大部分は女性であるため、それが平均年収を下げている理由の1つであると考えられます。
5、社会の需要に対して管理栄養士の人数が多いため
管理栄養士の人数は令和5年時点で約28万人[5]。年に1回国家試験が実施されるため、毎年有資格者数は増加しています。しかし、未だに1人しか配置しない職場も多く、管理栄養士の需要は低い傾向にあります。現状、仕事を探す管理栄養士の求職者の数が求人募集を上回っており、低賃金な雇用条件であっても応募が集まってしまうことも、待遇が改善しない理由であると考えられるでしょう。
管理栄養士として稼ぐにはどうしたらいい?

管理栄養士の資格を活かした仕事では稼ぎにくい理由として考えられることを解説しましたが、ここで肩を落とす必要はありません。前向きに収入を上げる方法を考えてみましょう。
実際に管理栄養士として稼ぐにはどのような方法があるか、代表的な例をご紹介します。
転職
管理栄養士として稼ぐには、より雇用条件の良い職場へ転職するのが近道です。管理栄養士の資格を活かした仕事の中でも比較的年収が高い傾向がある分野は、大学教授などの「研究・教育」分野や、公務員に当たる栄養教諭や学校栄養職員などの「食育・教育」分野、保健所管理栄養士などの「行政」分野だと言われています[6]。
また、同じ分野でも転職することで年収が上がるケースがあるため、収入アップを狙いたい方は転職を視野に入れてみてはいかがでしょうか。
起業
収入を上げるためには、思い切って起業するという手段もあります。社員として雇用されるのではなく、自分で事業を起こしてオリジナルサービスや商品を作り販売することができれば、年収の上限はなくなります。また、自由に自分の働き方を決められるため、勤務時間に縛られることなく、生活スタイルに合わせた働き方を目指せるというメリットもあると言えるでしょう。しかし、開業資金や安定するまでにはそれなりの労力が必要になるため、当然リスクも伴うことは頭に入れておく必要はありそうです。
副業(本業+α)
会社に雇用されているメリットも手放したくないという場合は、副業を始めるのがおすすめです。本業を持ちながら副業で追加の収入を得られれば、安定して収入アップを狙うことが可能になります。空いた時間で作業ができる業務委託の仕事を受注するのが一般的です。
稼げる管理栄養士になるために必要なこと

管理栄養士として現状以上に稼ぐためには、転職や副業に挑戦すれば簡単にうまくいくわけではありません。稼げる管理栄養士になるためには何が必要なのでしょうか?
スキルアップ
専門職である管理栄養士として稼ぐためには、常に自分の価値向上に繋がるスキルアップを意識することが重要です。たくさんの管理栄養士がいる中で選ばれるためには、自分ならではの「売りポイント」を確立する必要があります。そのためには、自分の強みや興味、磨いていきたい専門性を明確にすることが重要です。
ビジネスマナーを身につける
起業、副業をする際には、様々な企業の方とやり取りをするため、社会人として最低限のビジネスマナーは必須です。1人の職場が多い管理栄養士は企業で一般的に実施される新入社員研修のような基本的なビジネスマナーを学ぶ機会が少ないため、自ら意識して身につけることで他の管理栄養士よりも一歩先を行くことができます。
専門性を活かして稼げる管理栄養士になろう!
稼げないと言われることも多い管理栄養士ですが、専門性を伸ばしてスキルアップすることで、十分稼ぐことができるポテンシャルを持っています。
今回紹介したポイントを押さえながら、専門性を活かして稼げる管理栄養士を目指してみてください。
【参考文献】(すべて2025年2月7日参照)
[1] 総務省統計局, e-start政府統計の総合窓口,令和5年度賃金構造基本統計調査_職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
[2] 国税庁,令和5年分民間給与実態統計調査結果
[3] 総務省統計局,e-start政府統計の総合窓口,令和5年度賃金構造統計調査_職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
[5] 厚生労働省,栄養士免許交付数の推移
[6] 厚生労働省,厚生労働科学研究成果データベース,管理栄養士の学歴及び職域と年収に関する疫学調査