管理栄養士の新たな働き方「リサーチダイエティシャン」とは?

管理栄養士の新たな働き方「リサーチダイエティシャン」とは?

近年、食と健康に関する研究が進む中で、管理栄養士の役割も多様化しています。その中で、リサーチダイエティシャン(RD:Research Dietitian)という職種が注目されています。この職種は、管理栄養士の中でも研究分野のスペシャリストとして活躍する専門職です。本コラムでは、リサーチダイエティシャンの具体的な仕事内容や、必要なスキル、将来性について解説します。

リサーチダイエティシャンの仕事とは?

リサーチダイエティシャンは、食と健康に関わるさまざまな研究に携わる管理栄養士のことを指します。臨床研究や疫学研究に関する知識とスキルが求められるため、高度な専門性が必要です。

栄養価計算のための食事ヒアリング

リサーチダイエティシャンの重要な業務の一つに、研究対象者への食事ヒアリングがあります。食事ヒアリングでは、対象者の食事内容を詳細に聞き取り、研究に必要なエネルギーや栄養素の摂取量を計算するために必要な、情報を漏れなく収集することが求められます。この際、食品の聞き漏れを防ぐために、具体的な食事の摂取状況や調理方法について丁寧に確認することが重要です。また、複数名の管理栄養士のチームにてヒアリングを実施する際には、担当者によって聞き方にばらつきが生じないよう、統一した質問形式やチェック項目を設定する等の工夫が必要となります。

研究に特化した栄養価計算

研究の栄養価計算においては、対象者の方から集めた食事データを元に、エネルギー・栄養素の摂取量をなるべく高い精度で推計することが求められます。リサーチダイエティシャンは、食品成分表の正確な理解を土台に、研究目的に応じた栄養価計算を行います。調理に関する知識の他、近年は加工食品や外食を利用する人が多いため、幅広い知識や経験が求められます。

リサーチダイエティシャンに求められるスキル

管理栄養士の新たな働き方「リサーチダイエティシャン」とは?

リサーチダイエティシャンとして活躍するためには、以下のような専門的なスキルが必要です。

食事アセスメントの専門知識

対象者の方から食事のデータを収集するにあたり、研究の目的等に合った食事アセスメントを実施する必要があります。食事調査法には様々な手法がありますが、各手法に関する理解や実施の際の注意点を把握した上で取り組むことが求められます。

栄養価計算の専門知識

日本人の食事データから栄養価計算をするためには、最新版の食品成分表(日本食品標準成分表)の正確な理解が必須です。食品成分表の数値がどのように作られているのか、測定サンプルや食品の分析方法等の背景への理解、調理による重量変化や成分の変化等に関する幅広い知識が求められます。

研究への理解

研究全体のプロセスを理解し、適切なサポートができることが重要です。統計学や研究倫理の知識、データ解析や論文を執筆できるスキル等があると、より高度な研究支援業務の受注が可能になります。

リサーチダイエティシャンになる方法

リサーチダイエティシャンとして働くためには、大学や研究機関の研究プロジェクトに参加するなどして研究経験を積む方法があります。また、未経験の管理栄養士でも、専門的な研修を受講することで、必要な知識とスキルを身につけることができます。

リサーチダイエティシャンになるメリット

管理栄養士の新たな働き方「リサーチダイエティシャン」とは?

専門知識を活かせる

大学院や企業での研究分野の実績がある管理栄養士にとっては、そこで得た経験や専門知識を最大限に活かせる仕事と言えるでしょう。研究分野の実績がなくても、栄養疫学に興味がある管理栄養士にとって、科学的根拠に基づく栄養学(EBN:Evidence-based nutiriton)の発展に貢献できる点が大きな魅力です。食事・栄養と健康の関係を明らかにする研究は、社会的な意義が高く、管理栄養士としてやりがいを強く感じることができます。

柔軟な働き方ができる

リサーチダイエティシャンは、大学や研究機関に所属するだけでなく、フリーランスとしてプロジェクト単位で業務委託契約を結び、お仕事を受注することも可能です。リモートワークができる場合もあり、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が実現できます。栄養価計算業務においては、好きな時間、好きな場所で働けることが多いのが魅力の1つと言えるでしょう。

収入アップの可能性

専門性の高い職種であるため、スキルや経験を積めば高収入を得るチャンスもあります。特に、論文読解やデータ処理のスキルを兼ね備えていると、より高度な業務に携わることができ、高単価での受注につながります。

リサーチダイエティシャンとして成功するためのポイント

専門知識のブラッシュアップを欠かさない

栄養学の分野は日々進化しており、新しい研究が次々と発表されています。リサーチダイエティシャンとして活躍し続けるためには、最新の研究手法や食品成分表の改訂情報など、業務に必要な知識を常にキャッチアップすることが不可欠です。学会への参加や論文の精読、オンライン講座の受講など、継続的な学びを習慣化しましょう。

食べることへの興味を持ち続ける

食文化や人の食行動、食品への興味を持つことが非常に重要です。人々の食行動の観察、世の中に流通している食品の把握、外食店のリサーチなど、日々の生活の中で知見を広げる、食経験を積むことが求められます。さらに、国や地域によって食べている食品や食習慣、調理方法などが異なることを把握しておくことが重要です。実際に足を運んでさまざまな食文化を体験し、各地の特徴を理解することは、食事調査のヒアリングや栄養価計算の精度向上に役立ちます。

リサーチダイエティシャンという新しいキャリアの可能性

リサーチダイエティシャンは、従来の管理栄養士の枠を超え、研究分野で専門的に活躍する新しい働き方です。食事調査や栄養価計算のスキルを活かし、健康や栄養に関する疑問を科学的に解明することに貢献できます。今後、栄養学の発展とともに、リサーチダイエティシャンの需要はますます高まることが予想されます。管理栄養士としての専門スキルを磨くことで、新しいキャリアの道を切り開いてみてはいかがでしょうか。