「乳腺炎は食生活が原因」は誤解かも!?本当の原因と対処法を解説【管理栄養士解説】

赤ちゃんと女性

※ヘルスケアライティングアカデミーを卒業した、弊社所属の専門家ライターが執筆した記事です。
※健康・栄養に関するヘルスケアコラムの執筆・監修は、こちらよりご依頼いただけます。

激しい痛みや発熱など、「乳腺炎」の症状はとてもつらいですよね[1]。
「脂っこいものを食べたら乳腺が詰まる」「ケーキや生クリームはダメ」と聞いたことはありませんか?
乳腺炎と食事の関係が気になる方へ、この記事では乳腺炎と食事の関係を科学的根拠に基づいて解説します。乳腺炎の原因や対処法について正しい知識を知って、産後を健やかに過ごしましょう。

目次

痛くてつらい乳腺炎。どんな症状で、いつ起こりやすい?

「乳腺炎」とは、乳腺に起こる炎症で、乳房に現れるくさび形の病変が特徴です。炎症箇所に痛みのほか、熱や腫れを生じ、38.5℃を超える高熱や悪寒、全身の痛みを伴う場合もあります。
ちなみに、「乳腺」とは乳房の中にあり、母乳を乳頭まで運ぶ「乳管」と、乳腺房が10~100個集まる「小葉」で構成されています。

乳腺炎は授乳中であればいつでも起こるおそれがあり、発生頻度は約2~33%ほどです。産後2~3週間がもっとも乳腺炎が起こりやすく、注意したい時期といえます。風邪と思って見過ごすことや、熱が出ないこともあります。気になることがあれば、医師や助産師に相談しましょう[1]。

乳腺炎の原因。食事が関係するって本当なの?

考える女性

乳腺炎を引き起こす主な原因は、母乳のつまり(うっ滞)と感染です。ただし、必ずしも細菌感染を伴うわけではありません[1]。

日本助産師会『乳腺炎ケアガイドライン2020』では、乳腺炎を引き起こす原因として以下の要因を挙げています。

【乳腺炎の誘因】
1. 乳頭に傷があり、細菌が定着している
2. 授乳回数が少ない、授乳回数または時間を決めて授乳している
3. 授乳の間隔を開けている
4. 赤ちゃんがうまく母乳を飲めていない(不適切な吸着、吸啜が弱いなど)
5. 母親または赤ちゃんに病気がある
6. 母乳が過剰に分泌されている
7. 授乳の急な中断
8. 乳房が圧迫される(きついブラジャー・シートベルト)
9. 乳頭上の白斑、乳管口や乳管の閉塞(乳疱、水疱、局所的な炎症反応)
10. 母親のストレスや疲労

【出典】日本助産師会『乳腺炎ケアガイドライン2020』[1]

このように乳腺炎には、授乳の回数・間隔、母親のストレス・疲労などが大きく関係していることが明らかにされています。現時点では、特定の食品の摂取が乳腺炎のリスクになるという確実なエビデンスは確認されていません[1]。

乳腺炎に食事制限は必要?脂っこいものは避けたほうがいい?

食事をする女性

もし乳腺炎になっても、極端な食事制限は避けましょう。授乳中はバランスの良い食生活を意識して必要な栄養と水分を十分に摂り、体力を維持することが大切です[1]。

また、母乳の中の脂質(脂肪酸)は、母親が摂った脂質の影響を受けます。そのため、母親が食事で脂質を極端に避けると、母乳に必要な脂質まで不足してしまうことがあります。「控える」よりも「質のよい脂質を摂る」ほうが、健やかな母乳を作るためには大切です[1,2]。

「乳腺炎かも?」と思ったときのセルフケア5つ

休憩する女性

乳腺炎の症状が疑われる場合は、まずは出産した病院や地域の助産師さんに相談することが大切です。ここでは、症状が軽い場合や、相談するまでに時間がかかる場合にできるセルフケアをご紹介します[1]。

1.ストレスを減らす

ストレスと疲労は乳腺炎の主な原因です。産後は十分な休息、水分、栄養をとりましょう。産後の家事、育児はひとりでがんばりすぎず、支援者を確保して、日常生活の負担を減らすことが大切です。

2. 体を清潔に保つ

疲労の面で無理がなければ、シャワー浴をして、乳房と全身を清潔に保ちましょう。

3. 授乳の回数を増やす

母乳のうっ滞(つまり)を解消するために、授乳の回数を増やして様子を見てみてください。

4.痛みのある箇所を冷やす

乳腺炎の痛みは冷やすと和らぐことがあります。保冷剤の場合は凍っていない状態で使いましょう。

5.強いマッサージはしない

過度なマッサージは症状を悪化させる場合があります。マッサージはやさしくさする程度にしてくださいね。

正しい知識で乳腺炎の対策をしよう!

授乳中は赤ちゃんのためにも無理な食事制限はせず、必要な栄養と水分を十分に摂りましょう。症状がよくならないときや、解熱してもしこりがなくならない場合は、乳腺炎ではなく、別の病気が隠れているおそれもあります。心配な際にはすみやかに医療機関に相談をしてください[1]。誤った情報に振り回されず、正しい知識で乳腺炎の対策をしましょう。

【参考文献】(すべて2025年12月11日閲覧)
[1] 日本助産師会, 乳腺炎ケアガイドライン2020
[2] 厚生労働省, 日本人の食事摂取基準(2025年版)
[3] 文部科学省, 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

著者プロフィール

『捨てないレシピ』著者 / 管理栄養士 / フードライター 小嶋絵美

管理栄養士 小嶋 絵美

保育園栄養士を務めた後、2018年に独立。「分かりやすく丁寧に」「すこやかな食生活へつながる情報を届けたい」との想いで、食と栄養の執筆をおこなう。身近な暮らしに寄り添う簡単レシピ・節約レシピを開発。訪問調理の講師として、産前産後や子育てのサポートにも携わっている。2025年4月初の著書「捨てないレシピ 皮も種も、無駄なく使ってもう1品 (サンクチュアリ出版) 」が発売。
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