平均寿命が延び、これからは人生100年時代になると言われています。しかし、20歳以上の男女の6人に1人が糖尿病になる可能性があります [1]。せっかくなら健康な体で長生きをしたいですよね? 今のうちから生活習慣を少し見直すだけで、糖尿病を予防できるかもしれません。
この記事では、糖尿病予防のために意識したい食事のポイントについて管理栄養士が解説します。
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糖尿病の予防は早めの行動がカギ!

糖尿病とは、血糖値を下げるインスリンというホルモンの作用の低下や不足により、血糖値が慢性的に高くなってしまう病気です。糖尿病には、予防が難しい1型糖尿病と予防することができる2型糖尿病があります。
糖尿病の人の90%以上が2型糖尿病と報告されており、遺伝的な要因に加えて、過食や運動不足などの生活習慣が影響して発症します。近年では、肥満でない人や若者の発症も増加しており、糖尿病の発症を予防するためには、なるべく早く生活習慣を見直すことが重要です[2,3]。
自覚がないから怖い!糖尿病が進行すると?
糖尿病は重症化するまで、ほとんど自覚症状がない特徴があります。そのため、糖尿病と診断されても治療を中断してしまう人や、健康診断の結果が悪くてもすぐに受診をせず、放置してしまう人が少なくありません[4]。
しかし、糖尿病を放置してしまうと、特有の網膜症、腎症、神経障害の3大合併症が進行し、失明や人工透析、足の切断などを余儀なくされることも。また、日本人の死因の多くを占めている、がん、心臓病、脳梗塞などのリスクも高まります[3]。
糖尿病は早期に発見し、しっかり治療をすれば、健康な人と同じように生活することが可能です。気がついた時には重症化していた、なんてことを防ぐためにも、年に1回は健康診断を受け、数値の異常があれば、早めに病院を受診することが大切です。
糖尿病を防ぐために意識したい食事の3つのポイント

糖尿病を予防するためには、定期的に健康診断を受けるだけではなく、日々の生活を見直し、行動に起こすことがとても重要です。ここでは、糖尿病を防ぐために意識したい食事のポイントを3つ紹介します。
(1)食べ過ぎに注意
体脂肪が過剰に蓄積されると、インスリンの作用が低下し、血糖値が下がりにくくなるため、糖尿病のリスクが高まります[3]。肥満の多くは、食べ過ぎに伴うエネルギー過多(カロリーオーバー)が原因です[2]。普段から食事量が多い、間食回数が多いなど、たくさん食べる習慣がある人は要注意。食事の適正量を知るのは難しいように思われがちですが、体重を測るだけで簡単に確認することができます。体重が増えた場合は食べ過ぎ(エネルギー過多)、体重が減った場合は食事量が少ない(エネルギー不足)である可能性が高いと判断できます[2]。定期的に体重計に乗る習慣をつけて、食べ過ぎを防ぎましょう。
(2)食物繊維を意識して摂取する
欧米において、1日あたり24g以上の食物繊維の摂取で、糖尿病の発症リスク低下が観察されたとの研究報告があります[6]。しかし、日本人の食物繊維の摂取状況をみてみると、令和5年の国民健康・栄養調査の結果では、成人男女(20歳以上)における1日の平均摂取量は18.2gで、目標にしたい量に届いていません[5]。野菜類やきのこ類、海藻類などの食物繊維が多く含まれる食品を、毎日意識的に摂取しましょう。また、主食を、玄米や全粒小麦パンなどに置き換えることで、食物繊維の摂取量を簡単に増やすことができるのでおすすめです[6]。
(3)飲み物の選択も大切

習慣的に清涼飲料水を飲んでいる人は要注意!継続的に大量の糖質を摂取すると”ソフトドリンクケトーシス”という急性の糖尿病になり、重篤な状態に陥ってしまう可能性があります[3]。
人工甘味料を使った飲料は、エネルギーや糖質のとりすぎを防ぐことはできますが、甘味を好む食習慣を続けることになるため、注意が必要です。
甘味があるジュース類を習慣的に飲んでいる人は、お茶や水、炭酸水など甘味がない飲料に少しずつ変えていきましょう[7]。
少しずつでも、できることから始めましょう
糖尿病の予防には、食事だけでなく、運動や睡眠の改善、禁煙なども併せて取り組むことが大切です。しかし、一度に全て改善しようとすると、ストレスになり、気が付いたら元の生活に戻ってしまうことも少なくありません。小さな取り組みでも良いので、できることからすぐに取り組み、無理なく継続することが、いつまでも健康な体でいられる秘訣です。
【参考文献】(すべて2025年2月3日閲覧)
[1]厚生労働省, 令和元年国民健康・栄養調査, 第2部身体調査の結果, 第53表 「糖尿病が強く疑われる者」及び「糖尿病の可能性を否定できない者」の状況-糖尿病が疑われる者の状況, 年齢階級別, 人数, 割合-総数・男性・女性, 20 歳以上, p161
[2] 厚生労働省, 日本人の食事摂取基準(2025年版)
[3] 日本糖尿病学会, 糖尿病診療ガイドライン2024
[4] 厚生労働省, 平成23年国民健康・栄養調査, 第3部生活習慣調査の結果, 第84表糖尿病の治療の未受診の理由(性・年齢階級別), p183
[5] 厚生労働省, 令和5年国民健康・栄養調査結果の概要, 栄養素・食品群別摂取量に関する状況, 栄養素等摂取量, 表2栄養素等摂取量(1歳以上、男女計・年齢階級別), p27
[6] 厚生労働省, e-ヘルスネット, 食物繊維の必要性と健康
[7] 日本糖尿病学会, 健康食スタートブック- 生活の質向上を目指して
著者プロフィール

管理栄養士 金澤りな
大学卒業後、保育園施設で栄養士業務の経験を経て、管理栄養士の資格を取得。現在は栄養士養成課程の助手をしながら、糖尿病専門クリニックに勤務。科学的根拠を基に正しい情報を届けたいという想いのもと、コラム執筆や食育講師、健康講演等などフリーランス管理栄養士としても活動中。
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