
「最近なんだかスッキリしない…」なんて、便秘のお悩みを抱えていませんか?便秘改善といえば、食物繊維を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。この記事では、食物繊維の摂取と便秘の真相や、便秘の解消法について管理栄養士が解説します。
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あなたは大丈夫?慢性便秘とは?
日本消化管学会では、便秘を「本来排泄するべき糞便が大腸内に滞ることによる硬便、排便回数の減少や便を快適に排泄できないことによる腸の閉塞感や排泄困難感などを認める状態」と定義しています。
中でも慢性便秘症は、6か月以上前から症状が発症し、最近3か月間続く便秘のために、日常生活や体に支障を来たしうる病態をいいます。慢性便秘症の改善には、食事をはじめとした生活習慣の見直し、薬物による治療が必要です [1]。
こんな人は便秘になりやすい!
便秘は特に女性に多く見られる症状で、運動不足、加齢、病気の影響や一部の薬が慢性便秘症の発症リスクになると考えられています。また、近年では腸内細菌叢との関連も注目されており、健康な人と慢性便秘症の人では、腸内細菌のバランスに違いがあることが報告されています[1]。
令和4年度の『国民生活基礎調査』では男性の27.5%、女性の43.7%が便秘の症状を感じていると答えており、食事や生活習慣を見直す必要があります[2]。
便秘は食物繊維を摂れば改善する?

便秘改善といえば、食物繊維をイメージされる方が多いのではないでしょうか?
実際、根拠となる研究結果によると、4週間以上に渡って1日10gの食物繊維を追加で摂ることで、排便の頻度の増加、便の硬さの改善、いきみの重症度が軽減されたと報告されています。ただし、この研究は、食物繊維を食事ではなくサプリメントから摂っていました。食事由来の食物繊維が便秘に対して、どのくらいの量でどの程度有効であるかについては、現時点でエビデンスがまとまっていません。
また、食物繊維のサプリメントには、腸にガスがたまるなどの症状が悪化するケースも報告されています。お腹の張りや不快感を感じた場合は、サプリメントの使用を一旦中止して様子を見ることが大切です[3,4]。
食物繊維が便秘にいいと言われる理由
では、なぜ食物繊維は便秘にいいと考えられているのでしょうか?
食物繊維は小腸で消化吸収されずに、大腸まで届く成分です。便の量を増加させるとともに、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌を増やし、腸内環境を良好に整える作用があります[5]。
意識しないと食物繊維は不足しがち?
『日本人の食事摂取基準(2025年版)』では、生活習慣病の発症予防を目的とした食物繊維の1日の目標量として、30~64歳の男性は22g以上(18~29歳は20g以上)、女性は18g以上が示されています[4]。令和5年度に行われた『国民健康・栄養調査』では、1日の食物繊維の平均摂取量は、男性18.8g、女性16.9gと、多くの人が目標量を下回っている恐れがあるのが現状です[6]。
食物繊維が摂れるおすすめ食材!

食物繊維は魚介類や肉類、卵などの動物性食品にはほとんど含まれず、植物性食品に多く含まれます。特に、豆類、野菜類、果実類、きのこ類、海藻類の摂取を、日々の食事で増やすことを意識しましょう。また、主食を玄米や麦ごはん、全粒粉パンなどに置き換えるなどの工夫も、食物繊維を効率的に増やすことができるのでおすすめです[5,7]。
運動と併せて腸すっきり!
食物繊維の摂取とともに大切なのが運動習慣をつけることです。運動量が多い人は、食物繊維の摂取量と便の硬さに関連があるという報告があります。まだ更なる研究が必要ですが、運動を取り入れることは慢性便秘症の治療の1つとして期待されています。運動習慣がない人は、なるべく歩いて買い物に行く、階段を使うなど、活動量を増やしましょう[1]。
辛い症状を放置しないで!
便秘の辛い症状が続くことは、身体的にも精神的にも負担になります。食事や生活の改善を試みることはとても大事ですが、時には薬や医療を頼ることも重要です。快適な生活を送るために、今できることから始めましょう。
【参考文献】(すべて2025年4月2日閲覧)
[1] 日本消化管学会, 便通異常症ガイドライン2023
[2] 厚生労働省, 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概要, 統計表,p32
[3] van der Schoot A, et al.The Effect of Fiber Supplementation on Chronic Constipation in Adults: An
Updated Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials, Am J Clin Nutr. 2022 Oct
[4] 厚生労働省, 日本人の食事摂取基準(2025年版)
[5] 厚生労働省, e-ヘルスネット, 食物繊維の必要性と健康
[6] 厚生労働省, 令和5年「国民健康・栄養調査」の結果
[7] 文部科学省, 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
著者プロフィール

管理栄養士 金澤りな
大学卒業後、保育園施設の栄養士業務の経験を経て、管理栄養士の免許を取得。栄養士養成課程の助手、糖尿病専門クリニック(糖尿病療養指導士)、食育講師などの現場に勤務。科学的根拠を基に正しい情報を発信し、健康な人を増やしたいという想いから、コラム執筆やセミナー講師などフリーランスとしても活動中。
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