【管理栄養士解説】脂質を控えても下がらない?中性脂肪を減らす食事術

健康診断の結果

※ヘルスケアライティングアカデミーを卒業した、弊社所属の専門家ライターが執筆した記事です。

健康診断で「中性脂肪が高め」と言われたことはありませんか?「脂っこいものを控えているのに、なぜ下がらないの?」と戸惑った方もいるかもしれません。中性脂肪を下げるには、脂質以外にも気をつけるポイントがあります[1]。

このコラムでは、無理なくできる中性脂肪を減らす食事と運動のポイントを、管理栄養士の視点からご紹介します。

目次

中性脂肪って何?高くなると何が悪い?

「中性脂肪(トリグリセライド)」とは、私たちの体に存在する脂質の1つで、エネルギー源としての役割を担っています[1]。しかし、血液中の中性脂肪が多くなりすぎると、動脈硬化や心血管疾患、脳梗塞などのリスクを高めることが知られています[2]。


血液検査では、空腹時採血(10時間絶食)で150mg/dl以上、随時採血で175mg/dl以上の場合に「高トリグリセライド血症」と診断されます[2]。

脂質だけではない!?中性脂肪が高くなる原因とは

ごはんなどの炭水化物のイメージ

中性脂肪と聞くと、「脂っこいものの食べ過ぎが原因」と考える方が多いかもしれません。しかし実際には、エネルギーの摂りすぎ、特に糖質の摂りすぎが中性脂肪の高値を招く大きな要因です[1]。
たとえば、主食(ごはん、パン、麺など)やお菓子の食べ過ぎ、清涼飲料水の飲みすぎは、体内で余分なエネルギーとして蓄積され、中性脂肪の増加につながります[1,2]。


また、アルコールの摂取と中性脂肪の値の関係についてははっきりとした結論が出ていないものの、アルコールの飲みすぎはエネルギー過多につながるため注意が必要です。脳出血やがん発症のリスクにもなるため、できるだけ減らすことが望ましいでしょう[1]。

中性脂肪を減らす食事法はこれ!無理なくできる工夫ポイント4選

飲み会の料理、ドリンク

「食べすぎないようにと思っていても、目の前のごちそうについ手が伸びてしまう」という方は多いのではないでしょうか。そんなときは「我慢」ではなく、「少しの工夫」を意識してみましょう。以下に中性脂肪を減らすための具体的な食事法をご紹介します。

1. 飲み会は「飲む量」と「おつまみの選び方」がカギ

ビールであれば中瓶1本、日本酒なら1合、ワインはグラス2杯程度の範囲で楽しみましょう。最初の一杯をゆっくり味わい、あとはウーロン茶に切り替えるというのも1つの方法です[1,3]。このとき、たとえノンアルコールの飲み物であっても、糖類が含まれているものには要注意です[2,3]。
おつまみはポテトや〆の雑炊、ラーメンなどの糖質の多いものより、枝豆、刺身、冷奴、野菜サラダなど、糖質が比較的少なくさっぱりしたメニューを選ぶことがポイントです[3]。

2. 甘いものが大好きなあなたへ。おやつと飲み物の選び方

クッキーやケーキ、菓子パンなどは、糖質や脂質を多く含み、エネルギーが高めの食品です。普段の間食には、ナッツや無糖ヨーグルトなど糖質が少なめのものがおすすめです[3]。
また、お菓子だけでなく、果物の摂りすぎも中性脂肪を上げる可能性があるので、注意が必要です[2]。
甘いカフェラテや加糖コーヒーなどにも糖類が含まれるため、無糖のコーヒーやお茶、ハーブティーなど、香りや温かさで満足感を得られる飲み物に置き換えて楽しみましょう[3]。

3. 主食は「ひとくち減らす」野菜のおかずで「しっかり補う」

ご飯がいつも大盛り、おかわりする、という方は、「いつもよりひと口減らす」「お茶碗を少し小さめのものにかえる」のような小さな工夫から始めてみましょう[3]。
主食を減らす分、野菜のおかずの量を増やしてみてはどうでしょうか。満腹感に一役買うだけでなく、日本人が不足しやすい食物繊維を補うことができます[1,3,4]。

4. 中性脂肪を下げる!? 魚を味方に!

『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』によると、魚に多く含まれるn-3系脂肪酸(EPAやDHA)の摂取が中性脂肪の低下に有効であると報告されています[2]。
肉料理に偏りがちな方は、焼き魚や煮魚、刺身などの魚料理を取り入れてみることをおすすめします[3]。

食事+運動で、中性脂肪はさらに減りやすくなる!

ウォーキングをするシニアの夫婦

食事だけでなく、運動を組み合わせることで中性脂肪の改善効果が高まります[2]。 実際に、有酸素運動は、運動しない人と比べて中性脂肪が有意に低下することが報告されています。

また、『動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2022年版)』では、血清脂質の改善を目的として、中等度の有酸素運動を「1日合計30分以上を週3回以上、または週150分以上」行うことが推奨されています[2]。

いきなり運動するのはハードルが高いという方も、まずは、エレベーターではなく階段を使う、買い物を徒歩で行う、テレビを見ながら足踏みするなど、「ながら運動」や「プラス10分」の意識からスタートしてみましょう。

今日から早速!中性脂肪を減らす習慣づくりを

忙しい日々のなかで、つい乱れがちな食習慣ですが、少しの工夫を積み重ねるだけで、中性脂肪を減らすための第一歩になります。
「今のままでいいのかな?」と感じたときこそ、習慣をリセットするチャンスです。
できることから始めて、自分の体と向き合う時間をつくっていきましょう。

【参考文献】(すべて2025年11月22日閲覧)
[1] 厚生労働省, 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書
[2] 日本動脈硬化学会, 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版
[3] 文部科学省, 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
[4] 厚生労働省, 令和5年国民健康・栄養調査報告

著者プロフィール

管理栄養士Yuka

管理栄養士・Yuka

一人ひとりの“心と身体が調和する暮らし”をサポートしたいという想いで、フリーランス管理栄養士として活動。複数の医療機関での経験を活かし、忙しい日々の中でも“自分を整える時間”を持てるよう、ライフスタイルに寄り添った提案を得意とする。また、科学的根拠に基づいたヘルスケアコラムを執筆し、健康づくりの知識や情報をわかりやすく発信することにも力を入れている。
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