【管理栄養士解説】ビタミンB1の働きと豊富な食品ランキング

ビタミンB1のイメージ

※ヘルスケアライティングアカデミーを卒業した、弊社所属の専門家ライターが執筆した記事です。

「ビタミンB1」と聞くと、どのようなイメージをお持ちでしょうか。

「疲労回復」や「夏バテ予防」といった言葉を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし実際のところ、これらに直接的な効果があると裏付ける明確なエビデンスは存在しません。

では、ビタミンB1は体の中でどのような役割を担っているのでしょうか。また、どのくらい摂ればよいのか、どんな食品に豊富に含まれているのかをご存じでしょうか。

本コラムでは、名前だけは知られていても意外と知られていない「ビタミンB1」の役割や効率の良い摂り方について、管理栄養士の視点から徹底的に解説していきます。

目次

ビタミンB1とは?体内での働きを解説

ビタミンB1は、水に溶けやすい「水溶性ビタミン」で、ビタミンB群の一種です。特に、ごはんやパンなどに含まれる糖質をエネルギーに変えるときに欠かせない栄養素として働きます。

そもそも「ビタミン」とは、体の機能を正常に保つために必要な栄養素のことですが、体内ではほとんど作ることができないため、食べ物から摂らなければなりません[1,2]。

ビタミンB1が不足するとどうなる?

ごはん

ビタミンB1の摂取が不足すると、神経や脳の働きに影響を及ぼし、脚気(かっけ)やウェルニッケ‐コルサコフ症候群といった欠乏症を引き起こすことがあります[1,3]。

脚気の主な症状には、全身の倦怠感、食欲不振、手足のしびれ、足のむくみなどがあります。進行すると、末梢神経や中枢神経が障害されて歩行が難しくなり、重症化すれば心不全を起こして命にかかわる場合もあります[1,3]。

歴史的に有名なのが、江戸時代に流行した「江戸わずらい(脚気)」です。当時、それまで主食として食べられていた玄米から白米へと食生活が変わったことで、脚気が急増しました。のちに原因が解明され、白米にする過程で胚芽部分が削られ、そこに多く含まれるビタミンB1が不足していたことが分かったのです[3]。

ビタミンB1の1日の摂取目安量と注意点

厚生労働省が策定する「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、日本人のほとんどが必要量を充足できる量として、年齢や性別ごとにビタミンB1の摂取推奨量が定められています。


【ビタミンB1の摂取推奨量(1日あたり)】

年齢/性別男性女性
18~29歳1.1mg0.8mg
30~49歳1.2mg0.9mg
50~64歳1.1mg0.8mg
65~74歳1.0mg0.8mg
75歳以上1.0mg0.7mg
※日本人の食事摂取基準(2025年版)より[1]

また、ビタミンB1の必要量は、食事から摂るエネルギー量に比例して増えるのが特徴です。例えば、運動量が多い人や体格が大きい人は、上記の基準よりも多く摂取することが望ましいとされています。
さらに、妊娠期・授乳期もエネルギーの必要量が増えるため、それに応じてビタミンB1の必要量も増加します[1]。

ビタミンB1が摂れる食品ランキング

肉などの食材

ビタミンB1は、肉類・魚類・豆類・穀類・種実類など、さまざまな食品に広く含まれています[6]。その中でも日本人は、主に肉類と穀類からビタミンB1を摂っていることが分かっています[4]。

そこで、肉類、穀類の2つのカテゴリーを対象に、消費者庁が示す『食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン』のビタミンB1を「豊富に含む」「含む」と表示できる基準を満たす食品の中から、日常的に食卓に取り入れやすい食材をピックアップしました。その中から、特に効率的にビタミンB1が摂れる食品のTOP3を2つのカテゴリー別に分けてご紹介します[5,6]。

【ビタミンB1が効率よく摂れる肉類TOP3】

食品名重量ビタミンB1含有量
1位豚 [大型種肉] ヒレ 赤身
焼き
生肉100gを焼いた状態1.21mg
2位豚 [大型種肉] ヒレ 赤身
焼き
0.65mg
2位豚 ひき肉 焼き0.65mg
(参考) 国産牛肉 ヒレ 赤身 焼き0.11mg
(参考)にわとり 若鶏肉
もも皮つき 焼き
0.09mg
※日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より[6]

肉類の中では豚肉が圧倒的にビタミンB1を多く含んでいるのが特徴です。参考に示した牛ヒレ肉や鶏もも肉と比較すると、豚ヒレ肉は10倍以上の差があることが分かります。

【ビタミンB1が効率よく摂れる穀類TOP3】

食品名重量ビタミンB1含有量
1位玄米ごはん茶碗約1杯(150g)0.24mg
2位干しそば(茹で)乾麺約1束を茹でたもの(260g)0.21mg
2位発芽玄米ごはん茶碗1杯(150g)0.20mg
(参考) 白米ごはん茶碗1杯(150g)0.03mg
※日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より[6]

穀類の中では、玄米ごはんや干しそばがビタミンB1を多く含む代表的な食品です。特に玄米ごはんと白米ごはんを比較すると、精米の過程でビタミンB1の多くが失われてしまうことがよく分かります。

【その他(肉類、穀類以外)のビタミンB1が効率よく摂れる食品】

食品名重量ビタミンB1含有量
魚類うなぎ かば焼き1食分(80g)0.6mg
たらこ 生1食分(25g)0.18mg
まさば 焼き1切れ(55g)0.17mg
野菜類だいこん みそ漬け1食分(20g)0.74mg
ブロッコリー 焼き小房5個分(55g)0.14mg
※日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より[6]

効率よくビタミンB1を摂る工夫

ビタミンB1は、水溶性ビタミンのため、水に溶け出しやすい性質を持っており、茹でるよりも蒸す、焼くなどの調理の方が損失を抑えることができます。汁ごと食べられるスープや味噌汁なども、効率よく摂る工夫のひとつです[1,6]。

毎日のエネルギー作りに欠かせないビタミンB1

ビタミンB1は、私たちの体を動かすエネルギーを作るために欠かせない栄養素です。そのほかにもさまざまな働きがあるため、不足しないよう普段の食生活の中で意識する必要があります。今回紹介した食品に偏るのではなく、いろいろな食品をバランスよく組み合わせて食べることが、健康維持につながります。ぜひ、今日のごはんにビタミンB1を含む食材をひとつプラスしてみませんか。

著者プロフィール

管理栄養士・公認スポーツ栄養士
安部 知亜梨

宅配食サービスの会社で生活習慣病予防の栄養相談に携わったのち、実業団スポーツチームの寮で専属栄養士として毎日選手の食事を作り、提供しています。現在はライターとしても活動中。科学的な知識と現場での経験をもとに、一人ひとりに寄り添った栄養サポートと情報発信を大切にしています。

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