高温多湿の日本では、梅雨から夏は特に食品が傷みやすい時期です。食中毒は、年間1000件前後あり、そのうち100件以上が家庭で起こっていると報告されています[1,2]。
この時期に特に気をつけたいのが、お弁当作りです。朝の忙しい時間の中で、食中毒の予防を意識できて調理できていますか?
この記事では、食中毒を防ぎ、安心して食べられるお弁当を作るコツを解説します。
Contents
夏の手作り弁当には食中毒になりやすい環境がそろっている!
夏場の食中毒は、主に「細菌」の大腸菌やカンピロバクター、サルモネラ属菌などが原因です。細菌の多くは高い気温と、湿気を好み、時間をかけて増えていきます。食中毒とは、増殖した食中毒菌を食べることで腹痛や、下痢、嘔吐などの症状が現れることを言います[4]。お弁当は調理してから食べるまでの時間が長く、夏の暑さや湿度が加わると、細菌の増殖に好条件になりやすいといえます。
細菌の増殖ポイントは「温度」「水分」
細菌を増やさないためには、温度と水分のコントロールが重要です。温度は約30~40℃、水分は多いほどに細菌が増殖しやすくなります。
から揚げやコロッケ、ハンバーグなどの食品は、中心部まで十分に加熱されていないと細菌増える原因になります。また、野菜の煮物、生野菜、果物から出た水分が、細菌が増殖しやすい環境を作ってしまうため、注意が必要です[2,3,4]。
ついやってしまいがちなことが実は菌を増やしている!
お弁当が傷みやすい特徴を3つ紹介します。
1.ミニトマトのヘタを取らずに入れる
ミニトマトのへたをつけたままお弁当に詰ることをしていませんか。へたには細菌が多く弁当に菌を持ち込むことになります。菌は持ち込まないことが鉄則です。へたは取り除いてから洗って詰めましょう[3]。
2.水分が出るおかずを入れる
水分の多い果物、煮物の水分が残っている状態の食品をお弁当にそのまま入れてしまうと、食品が傷みやすくなります。また、お弁当のおかずの仕切りなどに生のレタスなど火を通していない野菜を入れることも、水分が出てしまう恐れがあるため避けた方が良いでしょう[2]。
3.おかずの加熱が不十分
ポテトサラダや、ゆでブロッコリー、卵料理は傷みやすいおかずの代表例です。ちくわ、ハムなど要冷蔵の食品を加熱せずにそのまま詰めている場合も食中毒を起こす可能性があるため、お弁当が傷みやすい時期は加熱が十分にされたものを入れるよう意識しましょう[4]。
3原則「つけない、ふやさない、やっつける」がポイント!
食中毒を起こさないために、細菌に関して次の3原則を意識してお弁当を作りましょう。
1.つけない
しっかり手を洗い、菌を付けないことが大切です。包丁まな板は魚用、肉用、野菜用とできれば分けると安全です[2]。
2.ふやさない
加熱調理した食品の粗熱をしっかりと取り、お弁当箱に詰めるのは料理が冷めてからにしましょう。温度が高いまま詰めて蓋をしてしまうと、湯気が結露してお弁当箱の中の水分が増えることになり、菌が増殖しやすい環境を作ってしまいます[2]。菌の増殖は温度を下げることで抑えられるため、保冷剤や保冷バックを使うと安心です。学校、職場などの出先に冷蔵庫があれば、冷蔵庫で保管してください[3]。梅干しや、レモン、酢などの酸性の強い食品は菌を増やしにくくする作用があるため、上手に活用するのもおすすめです[4]。
3.やっつける
細菌のほとんどは75℃で1分加熱すると死滅します。食材はしっかり中心部まで加熱してください。生焼けを防いで菌を死滅しましょう[2]。
食中毒予防は、毎日の習慣から
食中毒は環境が整えば季節に関係なく発生します。そのため、涼しい時期でも油断は禁物です。食中毒予防の方法を知り、普段の調理から実践することで、良い習慣が身につけておきましょう。
【参考文献】(すべて2024年6月15日閲覧)
[1] 厚生労働省, 4.食中毒統計
[2] 政府広報オンライン, 食中毒予防の原因と6つのポイント
[3] 農林水産省,家庭で実践!食中毒予防策
[4] 内閣府, 食品安全委員会, 【読み物版】 [生活の中の食品安全 −食中毒予防の三原則について− (食品安全委員会委員 熊谷 進) その2] 平成28年8月26日配信
著者プロフィール
管理栄養士(医療・福祉マネジメント研究科修士) 中川 啓子
病院で働いたのち、フリーとして幼児食、成人の生活習慣病またはメタボ改善、高齢者の介護食まで各ライフステージ栄養指導を経験。現在は訪問栄養指導を中心に活動中。地域住民の食を通して包括的な支援をしている。