【管理栄養士監修】子どもの肥満を防ぐ!家庭でできる食事と生活習慣のポイント

「最近、子どもの体重が気になる…」と感じたことはありませんか?
文部科学省が行う『令和6年度 学校保健統計』では、肥満の子どもは9〜12歳で最も多く、特に9歳以上の男児では、およそ10人に1人が肥満であることがわかっています[1]。
子どもの肥満は、将来の高血圧や糖尿病といった病気のリスクを高めるだけでなく、心の健康にも悪影響を及ぼす恐れがあります。だからこそ、子どものうちから「肥満になりにくい生活習慣」を身につけることが大切です[2]。
この記事では、子ども(6~18歳)の肥満の基準や健康リスク、家庭でできる予防法について解説します。
放っておけない!子どもの肥満が招くリスク
肥満とは、脂肪組織に過剰に脂肪が蓄積した状態のことを指します。
子どもの肥満が引き起こす問題は、見た目だけではありません。日本肥満学会が策定する『肥満症診療ガイドライン2022』では、肥満に伴って起こりやすい健康面、心理面、社会面の問題について、以下のように示されています[3]。
【肥満に伴う主な健康リスク】
・高血圧
・早期動脈硬化
・睡眠時無呼吸症候群
・2型糖尿病
・内臓脂肪型肥満
・非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
・月経異常
・運動器機能の低下
・いじめ、不登校など
子ども(6~18歳)の肥満の基準を知ろう

子どもは成長過程にあるため、極端な食事制限は成長の妨げになります[3]。まずは、ダイエットが必要かどうかを見極めることが大切です。
大人の肥満は体格指数のBMI(Body mass index)で判定しますが、子どもの肥満は、実際の体重と標準体重から計算する「肥満度」を用います[2]。
日本肥満学会では、「肥満度」が20%以上で、かつ体脂肪率が一定以上増えている状態を、肥満と定義しています[3]。
【肥満の定義】[3]
肥満度:20%以上
体脂肪率:男児:25%以上(6〜18歳)
女児:30%以上(6〜10歳 )
35%以上(11〜18歳 )
お子さんの肥満度を計算してみましょう。
〇肥満度の計算式[4]
肥満度(%)= {(体重(kg) - 標準体重(kg))/ 標準体重(kg) } × 100
〇標準体重の求め方[4]
標準体重(kg) = a × 身長(cm)- b
※a、bは以下の表をご参照ください
係数 年齢 | 男 | 女 | ||
a | b | a | b | |
5 | 0.386 | 23.699 | 0.377 | 22.750 |
6 | 0.461 | 32.382 | 0.458 | 32.079 |
7 | 0.513 | 38.878 | 0.508 | 38.367 |
8 | 0.592 | 48.804 | 0.561 | 45.006 |
9 | 0.687 | 61.390 | 0.652 | 56.992 |
10 | 0.752 | 70.461 | 0.730 | 68.091 |
11 | 0.782 | 75.106 | 0.803 | 78.846 |
12 | 0.783 | 75.642 | 0.796 | 76.934 |
13 | 0.815 | 81.348 | 0.655 | 54.234 |
14 | 0.832 | 83.695 | 0.594 | 43.264 |
15 | 0.766 | 70.989 | 0.560 | 37.002 |
16 | 0.656 | 51.822 | 0.578 | 39.057 |
17 | 0.672 | 53.642 | 0.598 | 42.339 |
【例:11歳男児、体重46kg、身長145cm、体脂肪率26%の場合】
〇標準体重: 0.782(a) × 145 - 75.106 (b)=38.284
〇肥満度 :{ (46- 38.284)/ 38.284 } × 100 =20.2
⇒肥満度20%以上、体脂肪率25%以上のため、肥満傾向と判定されます。
おへそ周りの長さで内臓脂肪をチェックしてみましょう。
子どもの頃から内臓まわりに脂肪が過剰に蓄積すると「内臓脂肪型肥満」となり、早期動脈硬化のリスクを高めるとされています[3]。
【内臓脂肪型肥満の目安】
計測位置:おへその高さ
おへそ周りの長さ:小学生75cm以上、中高生80cm以上
治療が必要になる前に…
肥満の状態に加えて、健康を脅かす合併症(※1)がある、またはそのリスクが高い場合は、「肥満症」として医学的な減量治療の対象となります。また、内分泌系などの病気、薬剤、遺伝が原因で起こる「二次性肥満」もあり、この場合は原因となる病気の治療が優先されます。
※1 高血圧、睡眠時無呼吸症候群、2型糖尿病・糖代謝異常、内臓脂肪型肥満、早期動脈硬化など[3]。
子どものダイエットは生活習慣と食事の見直しから

子どもの肥満の多くは、食べ過ぎや偏った食事、運動不足、睡眠不足、生活リズムの乱れ、ストレスに伴う過食、間食、夜食行動など、生活習慣が複雑に関係していると考えられています[3]。
生活習慣を見直すことは、健康的な体型に近づく第一歩です。ここでは、家庭でできる「食事、運動、睡眠の工夫」を具体的にご紹介します。
【食事】時間を決めて、味わって楽しく食べよう
小児期は成長期であるため、例え肥満症の治療であっても、 厳しいエネルギー制限は推奨されていません。 身長が伸びている年齢では、体重は現状維持を目指しつつ、身長は成長曲線の基準線に沿って伸びるパターンを目指しましょう。
『肥満症診療ガイドライン2022』では、肥満予防のために、以下の内容を推奨しています[3]。
【食習慣見直しチェックポイント】
☐ 1日3食ほぼ決まった時間に食事をとる
☐ 食事に集中して、よく噛んでゆっくり食べる
☐ できるだけ家族揃って楽しい雰囲気で食事を楽しむ
【運動】こまめに体を動かそう
体を動かすことは肥満の改善だけでなく、体力、骨の健康、認知機能、心の健康などを向上させることがわかっています。
厚生労働省が策定する『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』では、運動習慣の基盤を作るために、以下の内容を推奨しています。
【睡眠習慣見直しチェックポイント】
☐ 早寝、早起きを習慣にする
☐ 小学生は9〜12時間、中学生・高校生は8〜10時間の睡眠を確保する
☐ 週末や休日も普段と同じ時間に起きる
☐ 朝は太陽の光を浴びて、身体のリズムを整える
急な激しい運動はケガや体調不良につながることもあります。休み時間に外で遊ぶ、掃除や食器洗いを手伝うなど、無理なくできる工夫から始めましょう[5]。
【睡眠】まずは早起きから
睡眠不足は肥満のリスクを高めるだけでなく、抑うつ傾向や学業成績の低下にも影響する恐れがあります。
厚生労働省が策定する『健康づくりのための睡眠ガイド2023』では、子どもの心身の健康を守るために、以下の内容を推奨しています[6]。
【睡眠習慣見直しチェックポイント】
☐ 早寝、早起きを習慣にする
☐ 小学生は9〜12時間、中学生・高校生は8〜10時間の睡眠を確保する
☐ 週末や休日も普段と同じ時間に起きる
☐ 朝は太陽の光を浴びて、身体のリズムを整える
家族みんなで食事と生活習慣を整えよう

子どもの頃の食習慣は、大人になってからの食習慣にもある程度影響を与えるとされています[2]。子どもの肥満予防には、家族の理解と協力が欠かせません[3]。家族みんなで取り組むことで、子どもだけでなく、大人にとっても良い健康習慣になります。
まずは「何から始める?」とお子さんと一緒に話し合い、小さな目標から始めることがポイントです。できたことを一緒に喜びながら、無理なく健康習慣を身につけていきましょう。今日から一歩、未来のための行動を始めませんか?
【参考文献】(すべて2025年8月28日閲覧)
[1] 文部科学省, 令和6年度学校保健統計(確定値)
[2] 厚生労働省, 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書
[3] 一般社団法人 日本肥満学会, 肥満症診療ガイドライン2022
[4] 公益財団法人 日本学校保健会, 文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課, 児童生徒等の健康診断
マニュアル平成27年度改定, P22
[5] 厚生労働省, 健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂に関する検討会, 健康づくりのための身体活
動・運動ガイド2023, P11-12
[6] 厚生労働省, 健康づくりのための睡眠基準・指針の改訂に関する検討会, 健康づくりのための睡眠ガイド
2023, P15-18
著者プロフィール

管理栄養士/インナービューティプランナー
眞城 絵美子
病院・保育園給食業務、特定保健指導を経験。産後の身体や心の不調を、食と心を見直すことで改善した経験活かし、フリーランス管理栄養士として活動中。腸内環境を整えて、体の内側から美と健康を叶える食事法を軸に、料理教室「ゆるり発酵life」を主宰。食育、食物アレルギーの食事に関する活動も行っている。