【管理栄養士解説】妊娠期だけじゃない!葉酸の働きと豊富な食品ランキング

生のほうれん草

※ヘルスケアライティングアカデミーを卒業した、弊社所属の専門家ライターが執筆した記事です。

「葉酸」と聞くと「妊娠期に必要な栄養素」というイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、「葉酸」は妊娠中だけでなく、全年代の人にとって欠かせない大切な栄養素です。

本記事では、葉酸の働きや、葉酸が豊富な食品ランキング、毎日無理なく続けるためのポイントまで、管理栄養士の視点でわかりやすく解説します。

目次

葉酸とは?体内での働きを解説

葉酸はビタミンB群の1つで、水溶性のビタミンです。細胞の分裂や機能を正常に保つために重要な役割を果たしています[1]。

葉酸が不足するとどうなる?

妊娠した女性が、妊娠成立後の最初の28日間に葉酸を十分に摂れないと、胎児の神経管(脳や脊髄のもとになる部分)の形成がうまく進まず、無脳症・二分脊椎・髄膜瘤といった「神経管閉鎖障害」を起こす一因になるとされています。日本では2011~2015年の間に、1万出生あたり約6件の割合で発生していることが報告されています。

また、葉酸が不足すると赤血球が正常につくられず、異常に大きな赤血球が増える「巨赤芽球性貧血」を起こすことがあります。加えて、葉酸が不足した状態では、血液中のホモシステインという物質が増え、心筋梗塞や脳梗塞の原因となる動脈硬化につながる可能性があります。

このように、葉酸は日ごろから不足しないよう摂取したい栄養素です[1]。

葉酸は1日にどれぐらい摂ればいいの?

厚生労働省が策定する『日本人の食事摂取基準(2025年版)』では、葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血を防ぎ、日本人のほとんどが必要な量を満たせるよう、食事から摂る葉酸の推奨量と付加量が定められています[1]。

【葉酸の摂取推奨量(1日あたり)】

18歳以上の成人240μg
※厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』より[1]

【妊娠・授乳中の葉酸の付加量(1日あたり)】

妊娠    初期+0μg
中期・後期+240μg
授乳婦+100μg
※厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』より[1]

特に妊娠を望む女性は知っておきたい!注意点

笑顔の妊婦

妊娠を計画している女性や妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の女性は、サプリメントや葉酸強化食品などから葉酸を1日400μg摂取することで、胎児の神経管閉鎖障害のリスクを減らせる可能性があるとされています。

ただし、神経管閉鎖障害には葉酸以外の要因も関係しており、葉酸を摂れば完全に予防できるわけではないことを理解しておきましょう。

また、サプリメントを利用していても、食事から葉酸を摂らなくてよいという意味ではありません。サプリメントに頼りすぎると、葉酸以外の必要な栄養素が不足してしまう可能性があるため、日頃からバランスの良い食事を心がけることが大切です[1]。

さらに、成人女性の中でも妊娠の可能性が高く、葉酸の必要性が高まる20〜30代女性は、『令和5年国民健康・栄養調査』において、他の年代より葉酸の摂取量が少ないことが示されています[2]。

だからこそ、この年代の女性は日頃から少し意識して葉酸を摂るようにできると安心です。

葉酸が摂れる食品ランキング

野菜

葉酸は、野菜類・豆類・肉類・卵類・嗜好飲料など、さまざまな食品に含まれています。なかでも日本人は、摂取している葉酸のうち約4割を野菜類から摂っていることが報告されています[2]。

そこで今回は、消費者庁が示す『食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン』において、葉酸を「豊富に含む」または「含む」と表示できる基準を満たす食品の中から、日常の食卓に取り入れやすい食材をピックアップしました。ここでは、特に効率よく葉酸が摂れる野菜類TOP10と、その他のカテゴリーで葉酸を豊富に含む食材をご紹介します[3,4]。

【葉酸が効率よく摂れる野菜類TOP10】

食品名1食分の目安量葉酸含有量
1位なばな(ゆで)小鉢約1皿分(70g)133µg
2位ほうれん草(ゆで)小鉢約1皿分(70g)77μg
3位枝豆(ゆで)約15ふさ(さや付き50g)65μg
4位水菜(ゆで)小鉢約1皿分(70g)63μg
5位ブロッコリー(ゆで)小さめ5房分(50g)60µg
6位小松菜(ゆで)小鉢約1皿分(70g)60µg
7位アスパラガス(ゆで)細め2本(30g)54µg
8位とうもろこし(ゆで)1/3本(可食部50g)43µg
9位豆苗(ゆで)小鉢約1皿分(70g)36µg
10位オクラ(ゆで)3本(21g)23µg
※文部科学省『日本食品標準成分表(八訂)増補2023年』より[4]

【葉酸が豊富で食卓に取り入れやすいその他の食材】

食品名1食分の目安量葉酸含有量
レバー 鶏1個(40g)520µg
レバー 牛1枚(30g)300µg
レバー 豚2枚(40g)324µg
玉露(抽出液)1杯分(100g)150µg
ドライマンゴー30g78µg
いちご5個(75g)68µg
焼きのり1枚(3g)57µg
アボカド1/2個(65g)54µg
※文部科学省『日本食品標準成分表(八訂)増補2023年』より[4]

レバーは葉酸が豊富な食品で、1食分でも成人の推奨量(240μg/日)をほぼ満たすことができます。ただし、ビタミンAも多く含まれるため、妊娠中は過剰摂取に注意が必要です[2]。摂りすぎを避けるためには、レバーを食べる頻度を週1〜2回程度にするのがおすすめです[1,4]。

効率よく葉酸を摂る工夫

日常の食卓では、葉酸を多く含む野菜類を毎日取り入れ、その他の食品も組み合わせることで、無理なく必要な量を摂ることができます。

また、葉酸は水に溶けやすい水溶性ビタミンのため、ゆでるよりも蒸す、焼くなどの調理の方が栄養の損失を抑えられます。汁ごと食べることができるスープや味噌汁なども、葉酸を効率よく摂る工夫としておすすめです[4]。

日々の食事で不足なく葉酸を摂りましょう

今回ご紹介した食品以外にも、葉酸はさまざまな食材に含まれています。特定の食品に偏らず、いろいろな食材を組み合わせたバランスの良い食生活を心がけることが大切です。

妊娠を考えている方はもちろん、これまで葉酸をあまり意識してこなかった方も、今日のお買い物や食事の中で、葉酸を含む食材をひとつ取り入れてみることから始めてみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

管理栄養士・公認スポーツ栄養士
安部 知亜梨

宅配食サービスの会社で生活習慣病予防の栄養相談に携わったのち、実業団スポーツチームの寮で専属栄養士として毎日選手の食事を作り、提供しています。現在はライターとしても活動中。科学的な知識と現場での経験をもとに、一人ひとりに寄り添った栄養サポートと情報発信を大切にしています。

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