お肉の脂に多い「飽和脂肪酸」は体に悪い?その理由と減らし方とは【管理栄養士監修】

※ヘルスケアライティングアカデミーを卒業した、弊社所属の専門家ライターが執筆した記事です。
忙しい毎日の中で、気づけば「肉料理が続いていた」「外食で揚げ物を食べることが多くなっていた」という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そんな時に特に気をつけたいのが、脂質の一種である「飽和脂肪酸」の摂りすぎです。
この記事では、飽和脂肪酸とは一体何か、体にどのように影響するのか、そして毎日の食生活で無理なくできる「アブラ(脂質)の摂り方の改善方法」について紹介します。
知らないうちに摂っている?飽和脂肪酸の正体

飽和脂肪酸は、脂質を構成する成分の一つで、バターなどの乳製品や、ラードなどの肉類の脂身など、常温で固体になる脂に多く含まれています。また、パーム油などの一部の植物油にも、比較的多く含まれています[2,3]。
脂肪酸には「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」があり、それぞれ性質や体への影響が異なります。
飽和脂肪酸は不飽和脂肪酸から体内で合成できるため、不足よりも摂りすぎに注意したい脂質といえます[1]。
なぜ摂りすぎは危険?飽和脂肪酸が招く「血管トラブル」
飽和脂肪酸を多く摂ると、動脈硬化や心血管疾患のリスクを高めることが報告されています。
なぜなら、飽和脂肪酸の摂取が増えると血液中のLDLコレステロールが上がりやすくなり、LDLコレステロールが高い状態が動脈硬化の進行と関わっているためです[4]。
また、脂質はエネルギー源として大切ですが、多く摂りすぎると余分なエネルギーとして体に蓄積されます。その結果、体重増加や肥満につながり、脂質異常症などの生活習慣病のリスクも高まります。
つまり、飽和脂肪酸の摂りすぎは、気づかないうちに血管を少しずつ蝕み、将来の病気を引き起こす可能性があるのです[2]。
あなたも摂りすぎていない?飽和脂肪酸の「目標量」をチェック

『令和5年国民健康・栄養調査』では、飽和脂肪酸の平均摂取量は、30代女性で1日当たり約16.5g(総エネルギー摂取量の約7%)、40代女性で約17.5g(総エネルギー摂取量の約8%)と推定されています[1]。
一方、『日本人の食事摂取基準(2025年版)』では、飽和脂肪酸を総エネルギー摂取量の7%未満に抑えることが推奨されています。ここでは、30〜40代女性で身体活動レベルが「ふつう」の方の総エネルギー摂取量を2,050kcalとすると、飽和脂肪酸の目標量は約15.9g未満となります。目標値を上回っている現状があるため、健康への影響を考えると、日常の食事ではなるべく控えることを意識したいところです[2]。
では、実際にどのくらい食べると目標量を超えてしまうのでしょうか。
例えば朝食に「クロワッサンサンドとカフェラテ」を食べた場合の飽和脂肪酸の量は、以下の通りです。
| 食品(1食分の目安量) | 飽和脂肪酸(g) |
| クロワッサン 1個(約40g) | 9.7 |
| ハム 1枚(20g) | 2.6 |
| スライスチーズ 1枚(18g) | 2.9 |
| カフェラテ(コンビニサイズ240ml) | 2.8 |
| 合計 | 18 |
| 30~40代女性の目標量(身体活動レベルふつう) | 約15.9未満 |
朝食だけで目標量を超えることがあり、多くの人が知らないうちに摂りすぎている可能性があります。
今日からできる!飽和脂肪酸を減らすための3つのコツ
(1) アブラを「良質なもの」に置き換える
バターやラードなどの動物性の脂を、オリーブ油、菜種油、大豆油などの植物性の油に替えてみましょう。
植物性の油に多く含まれる不飽和脂肪酸は、血中脂質のバランスを整え、血管の健康を守る働きがあります[4]。パンに塗る油をオリーブ油に替える、お菓子作りに植物油を使うなど、日常の中でできる小さな工夫が大切です。
(2) 肉より魚を選ぶ
青魚(サバ、いわし、サンマなど)に含まれるEPAやDHAには、血中の中性脂肪を下げる働きや、血管の炎症を抑える働きがあることが知られています。中性脂肪が下がることで、結果的に動脈硬化の進行を抑える可能性も報告されています[4]。肉料理の回数を少し減らし、魚料理を取り入れるだけでも、脂質バランスは自然と整います。焼き魚や煮魚のほか、缶詰を活用し、無理なく続けられる方法で取り入れましょう。
(3) 低脂肪の乳製品を選ぶ
牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品にも飽和脂肪酸が含まれます。低脂肪や無脂肪タイプを選ぶことで、脂質を抑えながら、たんぱく質も補給できます[3]。味に物足りなさを感じる時は、果物を加えるなどして美味しく楽しみましょう。
アブラの“選び方”で変わる健康

飽和脂肪酸を減らすことは、好きなものを我慢することではありません。日々の食材選びや調理のひと工夫で、脂質のバランスは自然と整っていきます。
ただし、植物油にも少なからず飽和脂肪酸は含まれるため、摂りすぎには注意が必要です[3]。同じエネルギーの範囲内で、より体に良い油を選ぶことが、無理なく続けられる食習慣につながります。
【参考文献】(すべて2025年12月7日閲覧)
[1] 厚生労働省, 国民健康・栄養調査(令和5年版)
[2] 厚生労働省, 日本人の食事摂取基準(2025年版)
[3] 文部科学省, 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
[4] 日本動脈硬化学会, 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版
著者プロフィール

管理栄養士(介護食専門管理栄養士ライター)
長沼りな
“食べる”を、もっと笑顔に。
介護食専門の管理栄養士ライターとして、高齢者の「食べる力」を支え、毎日の食事を安心して楽しめる工夫を伝えています。介護現場での経験を活かし、栄養ケアをやさしい言葉で発信しています。
