突然ですが、あなたは日々仕事をする中で『クリティカルシンキング』できていますか?
私は、食と健康の専門家として活動をするなら、欠かせない思考だと思っていますが・・・
先日、若手の管理栄養士さんとお話しをしている中で、
『クリティカルシンキング』という言葉さえ、初めてきいた!!という反応をされました。
よく考えてみれば、それもそのはず・・・
管理栄養士の国家試験では『クリティカルシンキング』の能力は問われません。
合格に必要なのは『暗記・記憶力』
ただそれだけです。
しかしながら、
食と健康の専門家として、実際にお仕事をする中でとても重要になるのは・・・
『暗記・記憶力』ではなく、この『クリティカルシンキング』なんです。
本やネットの情報に流されないためにも、私たち食と健康の専門家である管理栄養士・栄養士はしっかりと身につけていきたいもの。
「初めて聞いた!」「実践できている自信がない!」という方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
そもそも『クリティカルシンキング』とは?
「critical(クリティカル)」とは、「批判的な・批判眼のある」等の意味を持つ英単語。
直訳すると「批判的思考」ですが、単にものごとを批判的にみるのではなく、目の前にある事象や情報を鵜呑みにせず、「これってほんと?」「なぜそうなるの?」と、様々な視点から疑問を投げかけ、深くものごとを考えることを言います。
例えば、
「肥満気味な成人20名に毎日トマトを食べてもらったら、ダイエット効果がみられました」
という情報を耳にしたとき、1分間で、あなたはいくつの疑問が浮かびますか?
・・・
・・・
・・・
・・・ピピピピピ!!
はい、時間ですw
私は、
1、「肥満気味」とする定義は何?BMIはいくつ?
2、「成人」とある対象者は、何歳の人?
3、対象者は男性?女性?
4、どこの国や地域の人を対象にしたの?(その人たちのバックグラウンドは?)
5、なぜ対象者を20名にしたの?
6、どのような募集方法で集められた対象者なの?
7、「毎日食べてもらった」というのは、何日間続けたの?
8、「トマト」はどんな種類のトマトなの?
9、1回にどのくらいの量を食べたの?
10、1日何回に分けて食べたの?
11、どんなタイミングで食べたの?
12、コントロール(対照)群はないの?
=トマトの代わりに何かを食べた人と比べていないの?
本当にトマトを食べたことによる結果なの?
13、「ダイエット効果」って具体的に何のこと?
14、どのくらいの差が出たの?何をもって効果ありとしたの?
15、この研究を行った資金源はどこ?トマトを売りたい会社が実施した研究ではない?
16、きちんと論文になっている質の高い研究に基づく情報なの?
というように、少なくとも16個以上の疑問が浮かびます。
(きっと時間があればもっと増えていきます)
先ほどの例文「肥満気味な成人20名に毎日トマトを食べてもらったら、ダイエット効果がみられました」を科学的根拠がある情報と言うためには、これらの疑問を全てクリアにしていかないといけないんです!
それなのに、パッと研究をした風の話を聞いただけで、
「なるほど〜。研究されているなら信頼できそう!」と鵜呑みにしてしまう人が多すぎる!!!
一般の方だけでなく、栄養士・管理栄養士も例外ではないと感じています。
本当に、気づかない(気づけない)って怖いことです。
栄養学の教科書を『クリティカルシンキング』で見ていき、出てきた疑問を晴らそうと文献を調べてみると、実はノーエビデンスじゃん!!!ということもフツーに入り混ざっていて、驚いてひっくり返りそうになります…
「これをただただ、一生懸命覚えさせられてたなんて、なんだったんだーーー!!」
と叫びたくなるほど。
改めて身の回りの健康情報に対して、
「なぜ?」「どうして?」「どうやって?」と、たくさんの疑問を投げかけてみてください。
そして、専門家として伝える活動をしたい方は、浮かんだ疑問を適切に検証する力まで備えておきましょう。
食と健康の情報を社会に伝えるコミュニケーターになるためには、管理栄養士・栄養士の養成課程で学んだ知識だけでは全然足りないことを実感する日々です。
巷にあふれる健康情報を整理し、混乱している人を適切な方向に導ける存在になるべく、みんなでスキルアップしていきましょう。