最近、「だるさ」や「疲れやすさ」を感じてはいませんか?毎月、生理が来る女性は、鉄不足と常に隣り合わせです。さらに、ダイエットなどで偏った食事をしていると、鉄不足による貧血のリスクが高まってしまいます[1]。鉄不足を防ぐために、意識したい食事のポイントを管理栄養士が解説します。
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あなたも不足気味?必要な鉄の量とは?
そもそも、私たちは食事から鉄を1日どのくらい摂れば良いのでしょうか?厚生労働省が策定する「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では18歳〜64歳の1日の鉄の推奨量は、10.5mg/日とされています。また、閉経や何らかの原因で生理が不定期の人や出血の量が多い場合、妊娠期や授乳期によっても鉄の必要量は異なります。女性は自身の体の状態やライフステージに合わせて鉄を摂取することが求められています[2]。
【成人女性(18~64歳)の1日の鉄の推奨量(mg/日)】
月経なし | 月経あり | |
成人女性(18~64歳) | 6.5 | 10.5 (月経過多の場合16.0) |
妊娠初期(〜13週6日) | 9.0 | |
妊娠中期(14週〜27週6日) | 16.0 | |
妊娠後期(28週0日〜) | 16.0 | |
授乳期 | 9.0 |
令和元年に行われた、国民健康・栄養調査の結果によると、女性の1日の鉄の平均摂取量は、20代6.2mg/日、30代6.4mg/日、40代6.7mg/日と年齢が若いほど少なく、必要な量に達していない可能性があります[3]。特に、生理時は出血によって、体からより多くの鉄が失われてしまい、鉄不足により起こる貧血(鉄欠乏性貧血)を防ぐためにも、鉄の摂取を意識しましょう。
量だけじゃない!意識したい食事のポイント
普段の食事でも、鉄が豊富に含まれている食材を意識して選ばれている方も少なくないのではないでしょうか?鉄を摂る量だけでなく、鉄を効率よく摂るために知っておきたい食事のポイントについて紹介します。
動物性食品と植物性食品を組み合わせよう
食品中に含まれる鉄には、動物性食品に多く含まれる「ヘム鉄」、植物性食品に多く含まれる「非ヘム鉄」があります[4]。中でも、日本人の鉄の主な摂取源は植物性食品と言われています。しかし、「非ヘム鉄」は「ヘム鉄」より吸収率が悪く、「ヘム鉄」に比べて約1/3程度であることが分かっています[2]。「非ヘム鉄」は「ヘム鉄」と一緒に摂ることでより吸収されやすくなるため、動物性食品と植物性食品どちらも取り入れることを心がけましょう[4]。
2.ビタミンCと一緒に摂る
緑黄色野菜や果物に多く含まれるビタミンCは鉄の吸収率を高めてくれます[2,4]。お肉や魚に大根おろしやレモン汁をかけて食べるなどちょっとの工夫で、さらに鉄の吸収率アップが期待されます。
3.よく噛んで食べる
鉄は胃酸が分泌されると吸収されやすくなります。 よく噛んで食べることで胃酸の分泌を促しましょう。また、胃酸の分泌は、柑橘類や酢などの酸味のあるものを取り入れることでも促進されます[4]。梅和えやポン酢などで味をつけるのもおすすめです。
サプリメントは使った方がいい?
最近は、薬局などでも様々な種類のサプリメントや栄養強化食品が販売されています。簡単に購入できるため、使用している人も多いのではないでしょうか。しかし、サプリメントの使用は、鉄の過剰摂取につながることも。鉄の長期的な過剰摂取は、多くの慢性疾患を発症させやすくするという報告がされています。サプリメントや栄養強化食品を使用する際には、使用方法や使用量を必ず守ようにしましょう。一方で、生理時の出血が多い人は、通常の食品からは必要な鉄の摂取量を補うことが難しく、鉄欠乏性貧血のリスクが高くなってしまいます[2]。自己判断をせず、早めに医療機関を受診して、必要に応じて鉄剤などの処方をしてもらいましょう。
貧血予防には偏った食事は禁物
貧血を予防するためには、鉄だけでなく、ヘモグロビンの材料となるたんぱく質や赤血球を作るときに必要な葉酸やビタミンB12などの栄養素も必要です。「朝食を抜いていないか」「間食ばかり食べていないか」など食生活の見直しもしましょう[4]。また、鉄不足による貧血だと思っていたら、大きな病気が隠れていたなんてこともあるかもしれません。体調への異変を感じたら医療機関を受診し、一度検査をすることも大切です。
【参考文献】(すべて2024年1月28日閲覧)
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット, 若い女性の「やせ」や無理なダイエットが引き起こす栄養問題
[2] 厚生労働省, 日本人の食事摂取基準(2020年版)
[3] 厚生労働省, 令和元年国民健康・栄養調査
[4]厚生労働省, e-ヘルスネット, 貧血の予防には、まず食生活を見直そう
著者プロフィール
管理栄養士 金澤りな
大学卒業後、保育園施設で栄養士業務の経験を経て、管理栄養士の資格を取得。現在は栄養士養成課程の助手をしながら、糖尿病専門クリニックに勤務。科学的根拠を基に正しい情報を届けたいという想いのもと、コラム執筆や食育講師、健康講演等などフリーランス管理栄養士としても活動中。
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